haiirosan's diary

散文とか

C'était à cause du soleil

f:id:haiirosan:20190409215510j:plain
無軌道な雑踏、都会の喧噪、淫らなネオンライトに浸されて、沈黙のまま佇む桜は狂気とイロを孕んでゆく。
春の夕刻は不穏だ。早過ぎた埋葬から流れでる鬱血、蒼白の人差し指が示す真相、37頁に潜むのは__
散りゆく桃色の画鋲に、鬼すらも出血を隠せない。止血剤を求めてナイフを振り翳す鳥獣戯画に、鴉すらも泣き喚くことを止めた逢魔ヶ時。
「チョコレートミントの溺死体は夏になってから浮かぶ」
誰かがそう囁いたけれど、ネオンライト踊る街角では、その声はあまりに小さく儚かった。
アイスクリーム・パーラーの悲劇、紅いパラソルの死、氷結した暁、越えることのできない午前4時と霊安室の夢。
f:id:haiirosan:20190409215929j:plain
雨中のカッターナイフ明滅せし君を切開するのは無垢と無言の心臓の鼓動藍色/琥珀のレンズ剥がれた黎明の記憶すらフィルムの彼方と消失した廻廊を廻るハイヒールと憐れみのスニーカーの解れに今、終息と安息に向かう38階の左手は蒼白さ(だけ)を増して――
「だって、太陽が眩しかったから」
私の網膜の海では桜と紅葉が細波を形成し、節の針時計を柔らかに狂わせているように視えた。

不可視の水槽に沈む10階

f:id:haiirosan:20170709185803j:plain
夕刻だけが世界の終わりをそっと告げた。
終わらない夢、始まらない暁、傍観者はいつも被害者だと、海辺の少女が囁く。
海岸線を失踪するナイフの傷痕、彼方で揺れる爆炎と断末魔。
翡翠色の貝殻が茜色に砕け散った刹那、裸足のままでは誰も――
かくれんぼに結末は無く、缶蹴りの彼方に消えた20cmの赤い靴は腐乱しない死体のまま、
誰にも__
記憶を嘲笑う凍結したナイフの照光、3月の悲痛は砂場に溶けた鼈甲飴と風船、救済措置の無い夕闇に無慈悲なマスクがワルツを躍る。
スクリーンに映る刹那の生存者は業火に包まれた女だった。黒衣を焦がした47の焼死体、事故を声高らかに宣言する人々、焦土と化した逆さ十字架の館に隠れる、最期の少女の微笑に誰も気づくこと無く。
擦れ違いざま、心臓に匿名のナイフを突き立てられた瞬間、春眠の太陽が幽かに揺らいだ。蒼は暗幕へと変換され、足音は遠ざかるファンファーレと嘲笑を鼓舞する。
アスファルトの冷たさ、群れるユニフォーム
__
鉄条網の彼方、静脈血に浸した鉄骨材が誰が為に死亡記事を。
不可視の水槽に沈む10階は平行世界へと誘う血塗れの白い手に引かれて――園児の骸が揺れる海中、落とされたマッチが放つ炎は刹那と消えて、歩道に追突する無慈悲な救急車が、世界の終わりと=で繋がることを誰も認めようとはしない。

ピアノ線と明晰夢

f:id:haiirosan:20190315183010j:plain
青酸がマシュマロに熔けた。
3月は虚ろな旋律が、混濁した誰かの意識に紛れ込んで嗤う。
かくれんぼに興ずる蒼い鳥
冷却水に溺れた熱病
砂漠渦巻く幻想に、いつか灰色の地平線が淫らに茜色に染まってゆくから__
ピアノ線と轢断された夕景、酩酊に臥した太陽は納棺され、全ては虚ろな影へと変換される。
物語の終焉、主人公不在の沈黙――
『異邦人』は紺碧の海に投げ込まれた花束と拳銃の結末。彼と彼女の罪は切断したマネキンを火葬することで抹消されたのか?
切断された夕刻に、私は心臓を置き忘れた。変容するア_カア_オ
f:id:haiirosan:20161008165539j:plain
水色の美術室が空中分解して対称性非対称性を傍観するから、遺失物は誰も引き取りに来ない。
夕景は刹那に消えてゆく、線路とプラットホームの隙間から視えて(しまった)蒼白な掌と手招き、彼方で首を無くした海岸線の少女みたいに
空白の青、墜落するだけの鳥達
明晰夢を切り裂いた羽根の行方
暗い朝を轢断する車輪の1節
脚の無い椅子 円卓上の死体
淡いドーナツが珈琲に溶けて
動脈血のジャムが凝固する――

二藍の屛風に血が滲む

f:id:haiirosan:20150403220824j:plain

春狂蔓延、
無呼吸症候群の魚
円転し続ける瞳孔
暗転し続ける網膜
白昼夢と千鳥足――
雨でも傘を差さなかったのが私だけではなかったから私は私が私で私に私をあなたはアナタなのか?

4月、血塗れのピアニカ
赤蟻と岩石、死体遺棄
放課後までのカウントダウン
偶数が隠す真相
茜色揺らぐ夕暮れ
3番目の赤マントへ手向ける青
彼女たちは白目のまま
煌めくのは注射器とナイフ
蠢くのは偽装と笑顔と__

葬列が真紅の円卓を彷徨っている。静脈血に突き刺さる墓標に刻まれるはずの名も無く、緑化した骸は唯艶やかな色彩を保ったまま――
ファインダー越しの死体はいつも穏やかで清廉だ。

二藍の屛風に血が滲む
鎌を振り翳す闇、暗い血溜まり
赤い靴、紅いコート、赫い__
口が裂けた夕刻、茜色の眼
青い鼈甲飴砕け散って
呪詛が黒電話から鳴り響いた

蜘蛛の糸に蒼がしがみつく

張り巡らされた無機質と縊死体

無表情の屋上で揺れる血塗れのシーツ
炎熱と罪の蜃気楼、誰も救われない黒縄地獄に差し出された神の手は白骨化していた。

夕刻÷夕焼夢、黄昏サイレン、矧がれたカーブミラー、裸足の百合、鴉とサングリア、虚ろな藍染め、無言のベランダ、出血多量のペットショップ、

やがて終幕の緋火を放つのは__

水色のサーカス

f:id:haiirosan:20190227214501j:plain

無呼吸症候群の朝日
ソーダ水の死
唸る柱時計に少女は
視えない檻と絶望を凝視する。
10階(以降)の世界で
誰が笑っているのか?
行き止まりの十字路、
線路上にて見つからない手首と血痕――
暗い雨朝は、未だにアスピリンを咀嚼しているというのに__
翠雨の祈りと氷結した造花
十字架を庇う蝙蝠傘
釘の錆を愛でる少女
グラスが存在しない日曜日に
誰が葡萄酒を誤飲するのか?
ロゼの悲劇、結末の無い舞台
暗幕に火を放つ君は
黒煙が色彩を塗り潰すまで
血の涙を流し続けて――
泡沫の放浪はいつか終わりを告げる。彼方の蒼が沈黙の音階をなぞる時、ひび割れたレコードは円転を止めるから。
遠い街、遠いサイレン。
綺麗なままの空虚を切り裂くのは__
水色のサーカスに世界は憎しみを滴らせる。雨、雨酔に救済を求めていた彼らにとって、青い炎揺らめくショーは大罪でしかなかった。
田園に転がる道化師、弾切れのベレッタ、誤った選択の果てにあるのは__
浸水に犯された舞踏会に透明が踊る。淡い死の刻印にシャンパンが息絶え、顔の無いウェイターがほくそ笑む。貴女の表情に翳りが浮游した刹那、暗いヒールを切り裂くケーキナイフの正体は――

Abstract Film

f:id:haiirosan:20180717191639j:plain

全ての呼吸が蒼に吸い込まれる。日曜日は千鳥足のサーカス、月曜日は副流煙の霧と肺患い。
――老人が颯爽と去った猟奇殺人の現場には領収書は無く、ただ水に浸るだけのPeaceが遺されて、
造花の呪詛が断線したイヤフォンを這い回る。血イロの旋律とFade Outの無い17曲、Number913,亀裂の奔るスピーカー。銃弾が終幕を告げるスピーチ、磔にされるのはいつも純白。だって__
夕刻、焼け焦げた血小板と酸素。
鴉すら羽根を忘れて首を吊る2/3.
空白の無い蒼に誰も笑みを零すことはなく、ただ、彼方で火を放つ少女の指先だけが、清廉な水色のマニキュアを煌めかせていた。
Abstract Film,緑に付加される不明機のエンブレム、暗いくらい影が揺らぐレンズ越しのブラックアウト。
なにもみえていないことをみえているとみえていたようなみたくはなかったみたくもなかった?
__暁の空は未だに眠っている
亡霊とサーチライト、脚が消失した君を曝くのは夜だけだと、幽かにラジオノイズが囁く。
――誰が囁くのか?何処で囁くのか?どうして囁くのか?
疑問符の雨に濡れて、光だけは淡さと柔らかさを増してゆく。

8mmフィルムから零れたアイスピック

f:id:haiirosan:20190224230405j:plain

有刺鉄線が藍色を纏う時、硝子の靴は粉々に砕け散った。
太陽の亡霊、
砂漠の亡骸、
薔薇の亡命
少女が時計の針を忘却していたのは「狂っていたから」だと綴られる
39面の死亡記事が切り裂かれた時、硝子の破片は行方不明を装い__
8mmフィルムから零れたアイスピック、穴の空いた夕刻に誰の影も消えて、唯琥珀の空白と着色料が漂流している。
何処に?何処へ?疑問符が四分音符に添付され、6弦は静かに失踪していった。
0月、モノトーンの変調に
私は呼吸を喪う――
704号室
赤濡れたバスルーム
張り巡らされた電線、
加速するRe.に沈黙だけが
反芻するラストシーン
可憐な花束枯れて、其処には__
水彩画の瓦解と静寂
夕暮の蒼は刹那に溶けて
線上に迷宮、出口は何処にも無い
水平線の彼方、視えない水
渇ききった蜜柑だけが変色を__

霞む虹色のフィルター、網膜硝子が細分化する夕景と水槽の記憶も忘れて__
奇数が貴女を刻む、右肺の違和感、午前3時の乖離、夢、また夢、
__穴の空いた(はず)の濡障子に、首の無い影が艶やかに揺れる。