haiirosan's diary

散文とか

黄昏のエンドロール、藍色の天鵞絨

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消失と忘却を輪廻する暁。
街には境界線を永延と描く黄泉路が、渇きをなくした夏を嘲笑している。
点滅を放棄した色彩たちは熱病に犯され、自らの心臓を露呈したまま、茫漠とそこに立ち尽くしていた。
夕刻に陰翳と華やかに
剥離した白磁
清爽の舞台から飛び降りる春雷
あまりにも死屍累累に浸されたアスファルト
彼方の着色料にやがて塗り潰されて__
__うな垂れるばかりの縊死体。
透き徹ったショーケース
輪切りの馬の行進
悲鳴或いは歓声
я¢
深紅が葡萄酒と混濁して
繰り返す落下傘の末路__
砂の海に埋められたメチルの瓶
渇くことのない祈りに、救済の波が視えた。
珊瑚礁が喀血に浸される時、
瞬く間に(不穏)がランドセルに突き刺さる。
錆びたガードレールに隠されしカッターナイフに、或る無垢は酷く歪んでしまったけれど、未だに「3つの選択肢」を与えようと夕暮れに彷徨うのは__
黄昏のエンドロールは藍色の天鵞絨を切り裂き、避けられぬ暗幕に花束を手向ける。
ヒ素に彩られた造花に
砕け散った硝子の靴は破傷風の笑みを零して――
染みゆく炎
黒煙の予兆
星屑がもたらす、終末

千草色の平行世界

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琥珀の季節を描くのは、最期の空中戦を求めて彷徨う巡礼者だった。
あまりにも酸素に充ちた群青色の海
息を止めて ライムミント掠めて――
――幽かな冷涼と共に
残酷な夏は記憶を喪ってしまう。
翠緑の平行世界に映る亡霊
跫音の無い少女は
自らが翳すダガーナイフに
刻まれた血の行方を忘れてしまった
車輪の下揚羽蝶を狂ったかのように捜す、老齢の小説家。彼の遺したダイイング・メッセージは雨と共に埋葬され__
千草色華やいで
(或る青い花)は自らの名を獲ることを許された
風化する水色と記憶、空白の花束
いつかの四月は湿度計を壊し
救済の無い熱病だけが
少女たちの足もとを、そっと焦がした。
影絵だけが抽象の季節を告げ
送電線の狂鳴は
誰かの縊死すら賛美してしまう
暗翳を染める、真っ赤な表紙
薄れ雪に漂う、紺碧の付箋
残り香のような淡い青すら、瞬く間に消えて__
やがて、最後の鴉が彼岸へと飛び立ってゆく。

石化面と心理的致死

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誰かの脾臓が曇天に浮游して、機内食は瞬く間に菜食主義者心理的致死をもたらした。
分解される倫理に慈悲はなく、ただ見えない乱気流が白骨化してゆく彼らを抱擁するだけ。
輪廻の運命、存在しない捜索隊と祈り
網膜に暗幕を降ろす、藍色の夕刻。
石化面の生者
微笑を浮かべる死者
冷たい手、握られた拳銃
幽かに滲むインクのような血すら
描く言葉も情景も無く……
唯、此処には葬列のような沈黙が、永遠と漂っ て
翡翠色の煉獄は、暗翳と瑞々しさを湛えたまま、
彼らの意識を、
思考を、
ことばをうばってゆく
「         」
「         」
――やがて、右眼から剥離したコンタクトレンズ
二重の視界に映るのは
無残に炭化してゆく世界だった……
焼け落ちた時計__
忘却と夕刻
黄昏のネガを雨雲が塗りつぶす。
未だに訪れぬ太陽の夜明け、
あまりにも澄んだ水色が網膜に揺らぐ声?
――水たまりと静寂を切り裂くサイレンの旋律に、暗い表情と殺意が炙りだされた。

「存在しない無意識下と毒蛇のポートレート」

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海月のような太陽の揺らぎ
麻痺した空は目眩のままに夢魔を貪り――
未だ訪れぬ澄んだ蒼の憧憬、
水面に沈む暁が全てを焼き尽くす時、
焼死体の眠りは何処までも凍えに浸されていた。
白昼の夢の意識は、海草のように揺らぐ電線みたいで、暗い影が夕濁した深海でずっと溺れている。
墓場のカーニバルは安堵に溺れた生者
それを躊躇いもなく茜色の闇に取り込んでゆく
――白骨化した心臓は瞬く間に動きをやめて
黄昏の波が引いてゆく刹那に遺されたのは
一滴の静脈血だった。

「存在しない無意識下と毒蛇のポートレート

敗血に浸された死者の絵画に
緩やかな蒼が滲んでゆく
散りばめられた、抽象性に砕けった白磁の硝子片。痛みと救いを求めて拾い集める左手は、
彼方の真相によって、白日の下に曝されてしまう
クリームソーダの残影は、逢魔ヶ紅と蒼白によって火を放たれた。
翠緑は焼け跡の行方不明者となり、純粋さに充ちていた呼吸も、あとかたも無く消えてしまった。

黄昏色の陰翳

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黄昏色の陰翳から、色彩と人々が消え去った。
平行する夕暮れ時に、逆さまに映る少女たちの鬱血__
或いは、
(昇ることの無いエスカレーター)を求めて彷徨う少年たちの影絵を塗り潰してしまうのは――
ゆるやかな波紋が水鏡の緑歌を瓦解させる。
灰燼と化した(回帰すべき場所)を
彼らは怨嗟と欲に浸された祝日法の糸に、
鋼鉄の糸に無慈悲に揺られて。
__最期に揃えた水際の靴すら、
救いようの無い空白に浸されていた。
紫煙へばりつく天井)
幽かな誰かの指先覗いて……
夕刻の夢魔は一人、また一人と亡骸を増してゆく。
五月雨のような髪に隠された正体に、逢魔ヶ時は永遠を湛えて、いつまでも夏が終わらないかのような__
止まないⅱの雨に刻印されし熱傷は、未だに俯いたままで、宙空の蝙蝠傘を見失ってしまう。
着地点の無いパラシュートみたいに、酸素と死の濃度が増してゆく。
やがて、茜色の暁のような傷痕に、無言の起訴はレインブーツに蹴散らかされて――
陰画の夕暮
琥珀の夕刻、遠い街の鴉が自らを変死体と化し、
黄昏を茜色に染めた。
誰も知らない(鬼ごっこ)を終わらせることのできない少女たちを救える鳥たちは、歪な旋律を奏で始めて__ 
口紅がまた一つ、粉々に。

翠緑に添加された果糖

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終末の交錯、蜃気楼のような痕跡は夕暮レに拭いがたい傷を刻んだ。
止まらない血
揺らぐ断片
無慈悲の警報
悲嘆に暮れる黄昏の匿名
炎上するのは仮想空間ではなく
君が死体のままの世界だから――
翠緑に浸された死体。
無言に添加された果糖、偽装に塗りたくられたノスタルジーに、世界は(毒)を錯覚した。
呼吸もままならない無音の咳に、埋まらない空席が一つ、またひとつと生まれてゆく。
〈誰もいない映画館?〉
二重まぶたのスクリーンに映るのは、色彩の無機質な笑みだった。
幽かな反転は、変死を水彩画に溶かし込む為に鐘が鳴るのは誰が為なのかすら__
赤死×に沈められた
空き瓶の罠に罠を巡らす輪廻に、彼らの信仰は何処へ消えてゆくのか?
いつか、躑躅の蝶が深緑を喰らう時。
木々は自らの名を忘却してしまう。
間断無く降る雨に、匿名の妊婦と淀んだ目蓋の百年戦争が描かれた。
血の染みた地図、此処には何もなかったことを__

陰翳を卑下した秋茜と止血剤

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「世界の果ての果てまで硝子で出来ている」

(彼)が嘯いた地平線の彼方には氷結した蜃気楼が拡がって、淫らな猟奇殺人の色彩すら、何処か柔らかな揺らめきを湛えていた。
――終わらない夏の白昼夢を映しだすガラスは、次第に焦熱を帯びて、凡てを焼き尽くしてしまった。
それは 泡沫の焰熱
傀儡は柔らかな影だけを遺して
行方不明者となっていった
足跡も無く
影もなく
――未だ止まない霧雨を焼き尽くす陽炎に
明滅の夏が嗚咽する
陰翳を卑下した秋茜と止血剤
踏み砕かれたカルテに遺された、筆跡の無い怨嗟
晩夏の旋律が「鎮魂歌」と見做されて
死を認知することすら赦されない魂が赤く染まるる刹那を、誰が咎めるというのか?
殺意の絵筆に、紅は宿ることなく……
陰画の夕暮れに、幽かな蒼が滲み依る。
沈黙或いは
沈痛__
彼方を過ぎ去る飛行機の不穏
あまりにも静か過ぎるネオンライトは埃を纏い、滑走路と共に、転がる白いスニーカーを黙殺する。
炭酸水流るる路上の夢、泡沫は丑三つ時に震えるクーラーを無言に導く。
車輪の無い三輪車
馬の消えた馬車
風船をなくしたピエロが嬌声をあげるとき、エレベーターを浸すのはソーダフロートの残り香だった。