手を伸ばせば、その先にあるのはいつも鉄条網だった。滲む血の行方すら渇ききって、いつか降る雨に救いを求めても、穏やかに浸食する砂塵の音色だけが永延と鳴り響いて。 錆びた剃刀空1989年、茹だるような快晴と青雲の或る日、一匙のバニラが世界に零され、…
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