haiirosan's diary

散文とか

Into The Blue

 揺らめく青い炎と紫の煙、三日月は霞む視界の中で笑っている。
 12月某日、私は砂漠の丑三つ時のような寒さの中で、ライターを着火しては消し、着火しては消しという動作を繰り返していた。小さな部屋、狂ったピアノとブラウン管。テーブル上の眼球のような冷凍ブルーベリー、ワイングラスには150mlのパームオイル、香炉に突き立てた線香は燃え尽きてしまっている。いつかテレビで観た蒼い世界、それは睡魔を誘うナレーションと共に映し出される海の姿であり、水の世界で生きる動物たちの残酷さと生々しさが醸し出す、刹那的な青であったような。或いは、青春の牢獄のような校舎の屋上で、どう転んでも絶望的な気しかしない未来を憂いていた、青い記憶の中で燃え尽きたPeaceの煙かもしれない。自意識過剰の怪物と化して以来、十数年も繰り返してきた青い春と修羅。冷凍都市が溶けゆく頃、私は生きているのだろうか。「例えば安っぽい希望はライターに力を込めるが如く、容易く灯り、消すこともまた然りである」と、或る日の白昼、地下鉄13番線のベンチでうな垂れる彼は嘯いていた。「どうしてそう思うの?」尋ねた刹那、彼は青い傘と靴を遺し、深い深い闇へと消えていた。そして、あの日の答えを聞くことも出来ず、私は今日も虚構の平和に火を点ける。