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haiirosan's diary

散文とか

GO GOサムラゴウチvsヘンリー・ロリンズ その2

 ロリンズの野獣のような咆哮を号砲に、ドラマーが典型的(おっと失敬)な2ビートを刻み始める。その軽快なビートの波に乗って、フィードバックノイズ混じりの歪んだギターリフと、重々しいベースがグライドし始める。彼らBLACK FLAGの大名曲、Rise Abobeで幕を開けたショウは、まさに大叫喚地獄とも云うべき狂熱を会場、いやその轟音と熱気は外の裏路地にたむろするホームレスボーダレスルーダレス或いはジャンキースケーターの狂気と諦観に満ちたキッズや老害にも明らかに届いていたはずだ。そうでなければ、会場内の草臥れた青色のペプシ・コーラの自販機を不良共が唐突に突き破って、彼らのリーダー格であるJ BOYが見境なく乱闘を仕掛け、私の顔面にペニー・ボードの切っ先をぶちかます訳が無い。

 爆音の中、モルトウィスキーをがぶ飲みするジョニー・サンダースかぶれの70sパンクス、其処に、竜巻のようなサークルモッシュから飛び出し、か細い腕でライダース目がけてラリアットを喰らわすナードのような少年。そんな勇敢な彼を尻目に所狭しと飛び跳ね、ロリンズの煽りに身を任せて荒れ狂う80sハードコアパンクスの集団。最早PA卓も占拠された無法地帯の中、AmericanWasted、Six Pack、ThirstyAndMiserableといった、BLACK FLAGの中でもとりわけ凶暴性に満ちたバースト・チューンが、火に油を注ぐように間断なく演奏される。そして、あまりにもヒートアップし、ライブを妨害する観客に対して、ロリンズもマイクスタンドを振りかざし、まさに地獄における最下層の獄卒のような形相で容赦なく殴りかかってゆく。空を切る鉄の塊、飛び交うバドワイザーの瓶、流血また流血、叫びと喚き、そして怒号。フロアには瞬く間に鉄とアルコールの匂いが充満してゆく。

 こ、この光景はわああああ、まるでネットの中のラーメン二郎コピペじゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。そのパンクスなりの秩序と礼節も糞もへったくれもない、まさにギルティであり同時多発ロットテロとも云える本場いや聖地であるアメリカン・ハードコアのライブの光景に、流石のジャップ・ハードコア・パンクスの第一人者を自負しているワシも唖然とせざるを得なかった。

 だが、ここでロリンズとの交渉を諦める訳にはいかない。大体ここはアメリケーンだぞおめえドイツモこいつもハッパキめてるリッツクラッカーズのビッキーズハイハイチャイナフーズに決まっているずえいと、ワシもアンコール?で演奏されているSlip it Inのジョン・コルトレーンの如きギター・オブリガードにノリながら、予め手に入れておいた上物のポッドスモーキングをキめ、彼らが演奏を終えて楽屋に引き揚げるその時を待っていた。

 ダブルアンコールと思われる、MyWarの断末魔が会場の狂乱に吸い込まれ、2時間近くにも及ぶライブは幕を閉じた。ワシはBLACK FLAGのローディーに、自らがGO GO サムラゴウチであることを告げると、彼は熱心なハードコアファンだったのか(というかそうでなくても関係者の端くれならワシのことぐらいは知っていて当然)、ご丁寧にロリンズ達の控室まで案内してくれた。

 小さなドレッシング・ルームでは何処か物憂げなロリンズを始めとしたメンバー達が座り込んでいた。天下分け目の大戦を終えたかのような彼らを眼前にし、一気に緊張感が高まった。だが、ギタリストやドラマーがチラチラと訳知り顔や怯えた目で私を見ており、それに加え事前にハッパをやっているし、まあフランクにいけるべと酷くサマー・オブ・ラブな思想でロリンズに話しかけた、その瞬間であった。

 唐突に視界に飛び込んできた、汗にまみれた骨ばった高速の拳。その固く鋭い拳は、ヒッピーでハッピーな気分でガードをする間もない私の眼の先でカーブし、テンプルを鮮やかに射抜いた。

 昏倒する意識、混濁する視界。次第に遠のく音の中で聞こえたのは、ロリンズが喚く「俺はストレート・エッジだからな!!!てめえみてえなパンクロッカー気どりのジャンキーがヘラヘラ話しかけてくると殺したくなるほどムカつくんだよ!!!!」という台詞、そして薄暗くなってゆく世界の中、クリーム色の裸電球の下で汗と血と共に妖しく輝く、ロリンズの背中に彫られた「SEARCH & DEATROY」の文字と、鬼のような形相をした黒い太陽の刺青であった……。