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haiirosan's diary

散文とか

Out of HELL

 人工的な煌びやかさに彩られた光のオブジェが建ち並ぶ都内某所、赤錆びた有刺鉄線が絡みつく様な寒さに満ちた12月。曇天の空の隙間から時折現れる、気紛れな「神」の悪戯は歩道を歩く人々の汚れた心臓を、鮮やかにそして無残に抉りだしてゆく。倒れ逝く人々、彼らが一様に片手に持っていた大皿になみなみと盛りつけられたローストビーフと柘榴は炭へと姿を変え、琥珀色の薄い珈琲は透明なGin and Limeへと変換された。

 瀕死の紅葉に群れる鴉の美しさ、熟し過ぎた銀杏の下でワルツを踊り狂う少女達の曖昧な心情。肋骨、鎖骨中線、秋風は最早吐き気を誘うような鋭い寒さに変装しており、凍りついた世界の果てで七色の風船を失くしたピエロの、黒い手袋がなぞる地図は痛々しく骨ばっており、私の心臓もまた、隙間だらけのライオンの檻から鮮やかな手口で引き摺りだされ、灰色の路上で悲鳴と咆哮を上げるのであった。

 赫、赤、シカゴ・ピザの憂鬱はNeil Youngが奏でる、『MyMY,HeyHey』の瑞々しいアコースティック・ギターの調べと共に、街頭サイレンや店頭狂騒は僕らの悲鳴、或いは妄想の死体の海へと姿を変える。青ざめた心臓の醜さ、深緑の酒瓶から解き放たれたワインレッド、輸入オレンジの殺意がこの街を埋め尽くす。

「バイバイ」そう、過剰なニコチンとアルコール、そして愚かしく狂気に満ちた民への警告に疲れた神の一声は、酷くしゃがれていて、それでもスピーカーから刹那に聴こえたその声は、私の憐れな二十余年の人生にさよならを、そして次に何かが待っているのかもしれないという淡く脆い希望の一片を刻み込んだ気がしたのだ。世界の終わり、その時が訪れた何時かのDecember,赤い月や気の触れた時計の針すら見えないような、宵闇と私の罪が深く深く頭を駆け巡り、私の足取りを重くそして覚束無いものにする。蒼い長髪、イギリスの夢、無軌道な80sロックンローラー、ルーパーと老人のギター、哀しげな少女、虚ろな少年、後ろの正面にはもう誰もいない。

 グラスにオレンジジュースと温い安ワインを注ぐ。憂鬱な夜に繰り返し流すOut of blue,Into the black,そういえばSunday,駅舎から線路まで10m、砂利と粉砂糖の上で私の黒いコンバースは自らの血で無様に赤く染まったけれど、それと同時にこの世界もまた、二度と漂白されることのない残酷な赤に染まった気がして、自然と口元が綻んでしまった記憶はまだ溶けることなく此処に。

https://www.youtube.com/watch?v=t4Y1wDdMYH4