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haiirosan's diary

散文とか

12月26日

 サナトリウム305号室、閉ざされた世界、閉ざした場所。僕は此処で綺麗な瞳が映し出された幾多もの写真を凝視している。

 規則正しいチャイム、正午を告げる無機質な鐘。何となくお腹が空いたので煙草を買いに行った。灰色、黒、カジュアル、無機質で長い長いエスカレーターですれ違う人々は憔悴し疲れ切っていて、「ああ、皆頑張って生きているんだ。生きて生きて狂ってその喜びが終末に弾け飛ぶんだ」と心の中で呟く僕は何故か赫混じりの涙を汚れたコンバースの靴先に零していた。瞬間の視線、一瞬でまた孤独。

 ボンヤリと登りきる刹那、ふと見かけた泣き喚く幼子を抱える母親と「思しき」うら若き女性の苦痛と憎しみに歪んだ鬼のような表情は、僕の曖昧な記憶から剥がれ落ちることはないだろう。大切な想い出はもう、色素の堕ちた髪の毛のようにとうに抜け落ちてしまったけれど。

 喫煙所、ミモザの造花と薔薇に囲まれた其処は副流煙に満たされていて、彼の幸福と彼の不幸によって濃霧のように覆われていた。救済されるようなたった数分の紫煙、身体を犯す狼煙は誰に合図するのか、密閉された迷宮のような空間。例えば霧の街を彷徨う虚ろな目のマネキンの憂鬱と鈍色のナイフの欲望を三十分のアニメーションに変換したとしてもそれは誰が為なのか!ああ、胃が痛む、イタイ、痛い痛い痛い痛い。

 ひび割れた僕の口元から垂れ落ちる紫陽花色の唾液。アスファルトにへばり付く異常の証。12月、寒いさむい朝明け、すべてを白日に曝すおせっかいな太陽が寝起きでまどろむ隙に、二本空けた酸化防止剤浸けのCASA SUBERCASEAUX、いつかの少女の肢体、何処かに棄てた女の死体、記憶は不鮮明で不安定・透明だから、溶けるような空の蒼に笑みを浮かべた刹那に頸動脈を切り裂いてしまいたい。僕は静かな朝に嗤い声を高らかに上げようと思った。けれど、咽喉からひり出されたのは、ニコチンとタール、そしてアルコールによって焼かれたような不気味な呻き声だけだった。

 嗚呼、惨めで苦しい、気が触れんばかりの今日がまたやってくる。長い長い一日、僕らの渇ききった未来に綺麗な水が差し込まれる日など訪れる訳がない!絶望、また絶望に身を悶える。

死んだ眼をしたヘッドフォンチルドレンのI PODは数ヶ月前に断線。凍りついた道端、がなる老人、割れるアタマから吹きこぼれる正常、どうか制限時速をとうに超えた無軌道な車が彼をそして私を――

――逢魔ヶ時、殺気立つ駅構内、ざわめく夕暮に響く嬌声の様な悲鳴と断末魔、何となく掲げるスマートフォンと赤く染まるマフラーの群れ、僕らの心はとうに腐りきっていた。