haiirosan's diary

散文とか

アル・カポネは4886番

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4886、なまえをなくした怪物、匿名性の君、名前を知らない中近東の円月刀が唸る。嗚呼、私が下北沢のペットショップを横切る度に、名前を付けられない惨めなシェパードが「君を凌辱したい」と嘯くような。
アル・カポネがそのふくよかな左頬を切りつけられたのは、マディソン・ストリートの草臥れたBarか或いは治癒が必要なFascination Streetか、スカーフェイスと4886$Chicago pizzaのけばけばしい朱と緑の織り成す禁酒法の夜は、貴女のような善意と禅道で構成されている人でも死と性を愛するのね、と。
もぐり酒場、花を咲かすようにエール・ビールコークLARKチークTimeは可憐な処女が紫煙と煌めくミラーボールの下でゆらりゆらりと揺れていた。けれど、私は彼女に触れることさえも出来ず、自らのハイヒールが床と心に空く4886mmの隙間に突き刺さるAM2:00からの逮捕劇を、自らへの戒めとして凝視する方に気をとられる辺り、私は惨めな豚かそれともドル紙幣に売春されるシャム猫か。
ところでハロウィンの夜は、肉切り庖丁を携えたブギーマンが、輪廻を繰り返し過ちと正解を廻り殺す為に、酷く短気な殺し屋ダッチ・シュルツ以上に公的機関の清潔な判事や検事からは畏れられていた。だが、否定に規定、銃は持っていないと翡翠色の100m poolの底で誓う警官の衣装を纏った彼らは、自らの指紋を遺すことなく、ブギーマンのMASKを浮かれ拍子に被った4886人の餓鬼を文字通り蜂の巣にし、溢れでる梅 毒 体 脂 肪 阿 片に満ちた血液が下水に流れ堕ちる。躁鬱だが聡明だったチカーノ、彼の哀れな死に様は紛れもなくアメリカに夢を持ち、巨大肥満体国家に敗北した1人の偉大なる孤独主義者の末路を描いているようでもあった。
然して今日は三月もいつの間にか半ば。ここにおいて中島敦『三月記』を論ずる心持ちなど毛根から猫毛が4886本抜け落ちたと仮定しても起きないが、願いましては一割、三割、五割のような奇数算盤感覚で、偶数の明日辺りに世界が終れば良いと思う。