haiirosan's diary

散文とか

蜜柑の海、オレンジの空

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冬の境界線 こたつと外界

冬の水平線 白と青と誰もいない世界

いつかの暖かさは橙の夕暮の如く 儚さは後悔に消える記憶

 

革靴が四拍を刻む度に、河に蜜柑が溢れだす

無表情の蜜柑 ざらついた肌と艶やかな色

内に秘めたその瑞々しさは 水の中でも露わにはならず

内に潜むその温度は 水の中の冷淡に浸ることもなく

水と云わず 陸を問わず 物も言わず

橙色が埋め尽くす午後

 

彼は独り 蜜柑に埋もれ

彼女もまた 蜜柑に溺れる

時折実を曝け出す 幾千万の内の幾つか

たやすく轢死体 或いは変死体と化す果実

その血液と肉片が 橙色の風景を深く染め上げる

 

混乱する街 教会に逃げ込む羊ども

狂乱する道 燃えているのは車か蜜柑か

オレンジに冤罪 柑橘類の喜劇と悲劇

 

冬の境界線 炬燵に蜜柑

冬の境界線 茜と橙と果実の世界

こうして夕景の橙は終わることなく 儚さも後悔も缶詰に加工されてしまった