haiirosan's diary

散文とか

千里眼が刻む剃刀と檸檬の夢

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3階の窓から、僕らは滑空するグライダーが真っ白な紙人形の群れを轢死体に変換するのを視ていた。
砂塵を巻き上げ、首を或は胴体や手足を鋭利なその翼で切り刻む渇ききった景色を。
その刹那に色は思い出せず、円転するシーンの結末に、誰かの死体を隠していたことで唐突に逮捕された君の可憐な姿だけが、僕の脳裏にこびりついてさ。
血塗れの手、スライドする景色、記憶の中の人たち、暗いクライ施設、君と僕は誰なんだろうか?

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檸檬が置かれたカフェで私はずっと角砂糖をかじっている。ブレーキの無いフォルクスワーゲン、♭のない楽譜の隊列が煉瓦道で転倒すれば、ほら、障子越しに正座疲れの抹茶がアイスキャンディを砕き始めるから。
蟻のクーデター、ウユニ塩湖に入水すれば遺体も綺麗な気がするから、世界は甘味を憎しみ始めた。
僕らはこうしていつまでもいつまでもいつまでも壊れかけた剃刀入りのダージリンを啜っていなければいけないのかな。
足の無いテーブル、傾けたカップから逃げる感性、冷めきった感情を曝す淡い夕景、骨だけの鴉の群れ、かりそめ、かりぬいの、茜、穴の空いた蒼白な手鞠の中をくらくら廻るエンドロール。

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