haiirosan's diary

散文とか

雨酔いのドールハウスと鴎の窒息

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雨の痕がマキロンみたいにアスファルトを濡らしていた。
針葉樹に隠されし罠を私は忘れていたけれど、ロゼワインがまだ桃色のまま笑っていたから、乾ききったパンチェッタと蜜柑飴を文月の七日酔いの為に。
かの王政は私の罪を嘲ることを赦さなかった。
御輿に積まれた猿の両目をえぐりだすべく、僕らは100人の対価を支払う。絶望に捧ぐ讃美歌を一小節奏でる度に、聴衆は首をめくり首をめぐり首をさぐり、ドールハウスの空白、肢体の告白。
然し、僕の弾く6弦を弾劾することは容易いと、彼も彼女も囁いたが、彼らが僕に口紅を渡すことはなかったし、七限目の道徳の授業に机上の32個の花瓶が変死体と化すことは、新国立美術館3Fの蝶も百合の裏切りに気付くまいと傍観者ではいられなかったのだろう。

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ストッキング揺れる日曜日の午後、海岸線を歩く少女を撫でるサイレンの悲鳴に、僕だけが沈黙を守っていた。
茜色の飛行機雲、鴎の窒息、この世界は息をすることすら辛いと叫び、27歳の彼は散弾銃を手に取った。空砲のトランペットに無表情なミッキーマウス、ダニエルの奏でる無邪気なピアノが銀座の地下一階に木霊した時、屋上の二人が終わりを迎える音を鮮やかに掻き消して、安楽椅子に沈む風船は永遠のパイロットとなり、その名を名も無き少女の墓碑に捧げる。