haiirosan's diary

散文とか

C'était à cause du soleil

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無軌道な雑踏、都会の喧噪、淫らなネオンライトに浸されて、沈黙のまま佇む桜は狂気とイロを孕んでゆく。
春の夕刻は不穏だ。早過ぎた埋葬から流れでる鬱血、蒼白の人差し指が示す真相、37頁に潜むのは__
散りゆく桃色の画鋲に、鬼すらも出血を隠せない。止血剤を求めてナイフを振り翳す鳥獣戯画に、鴉すらも泣き喚くことを止めた逢魔ヶ時。
「チョコレートミントの溺死体は夏になってから浮かぶ」
誰かがそう囁いたけれど、ネオンライト踊る街角では、その声はあまりに小さく儚かった。
アイスクリーム・パーラーの悲劇、紅いパラソルの死、氷結した暁、越えることのできない午前4時と霊安室の夢。
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雨中のカッターナイフ明滅せし君を切開するのは無垢と無言の心臓の鼓動藍色/琥珀のレンズ剥がれた黎明の記憶すらフィルムの彼方と消失した廻廊を廻るハイヒールと憐れみのスニーカーの解れに今、終息と安息に向かう38階の左手は蒼白さ(だけ)を増して――
「だって、太陽が眩しかったから」
私の網膜の海では桜と紅葉が細波を形成し、節の針時計を柔らかに狂わせているように視えた。