haiirosan's diary

散文とか

8月32日のブラック・フラッグ

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逢魔ヶ時、遺影のキミの声が永延と反芻するから、私は8月32日ブラックボックスをいつまでも掻き毟っている。

「君はあの9月を覚えているか? 空白と色彩のカクテルに溺死した死相漂う日々を」

血塗れの管制室、Jefferson Airplaneの遺体が未だに見つからないことを、ヘンドリックス・トニックを傾けながら嘆く君の眼には、深淵の網が垣間見えるような薄暗さがあったことを。

コンタクトレンズから、或いは鼓膜から――

茨に切り刻まれる、それとも鉄条網に抱かれる事のどちらかを迫られたとき、私は確かに屋上4Fから、蒼ざめた生ける屍の群衆を傍観していた。

「Hairspray Queen,マネキン政権の崩壊を」

レーガン後の世界に彼らは〈X〉を掲げて革命を起こした」

黒旗が「何」の象徴であるかを訪ね歩く原宿午前2時

拳で摺り硝子を砕いた意味を自らに問う新宿午後2時

燃えあがるConverse,Flags

眉間をライフル 協会に撃ち抜かれる彼らの今わの際を観ていたら、私はカセットテープをいつの間にか破棄してしまった、そう、いつのまに。

やがて、無音の中、影絵だけが揺らぐエンドロール

ロールケーキに巻き込まれた変死体を添加物が忌避すること

ロールシャッハ検査の真相に、永遠の水槽を想起すること

32日、夏の夕暮れ零れ落ちて――五月雨色と夢色、頭蓋骨に注がれたリキュール、

泡沫の無いボリス・ヴィアンの焼死体から這い出ようとした母親(のような)亡骸は硝子に集音された少女の声を貴女はいつまでも信じないから、彼は右眼の罪と死を夕刻のベンチに忘れてしまったの。

赤電話の呪詛に震えるのは、いつも目蓋に揺れる揚羽蝶の罠だと、ブラウン管のテストパターンが笑う。
偽りの匿名が無言のまま饒舌なこと
偽りの同名が無音のまま消された事
偽りの、隠すべき蓄音機揺らいで
音、声帯切り裂かれた夢現
誰もいなくなったデスク
終末の茜に染まる地図
――

無機質な理科室は、名も無き淫らな損壊死体に彩られて

「紫逅の鏡台」

砕け散ったのは、