haiirosan's diary

散文とか

線香花火の水死体

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消えゆく硝煙反応にクリームソーダほくそ笑み、密やかな街頭スクリーンに踊るシルエットは、唯々消えゆく為の淑やかさだった。
遠い町、遠く、夢、幽かにカッターナイフ揺れて。
オレンジジュースの苦々しい笑みと、水鏡に揺れるゼリーに甘味料を混入し忘れたと嘆く君は、秋雨の虚ろさの群れの中で、たった独りパラソルに炎を灯して笑っていた。
色彩の懲役刑と示談の灰色、私のコンタクトレンズが行方不明になった時、燃えあがる傘が花火のように輝いて……
白昼、八月の蜃気楼に壊れた。
うたた寝の死と沈黙に揺られて、彼女の心は終点へと到達してしまう。
摂氏に汗ばむだけの氷塊、線香花火の水死体横たわるアスファルトに、まひるのそらは永延と残響を奏でる。

「まだ水曜日か」

誰かがそう嘯いた教会は既に夕炎に呑み込まれ、カッターナイフで切り裂くだけの血管の艶やかさと、フロントガラス砕け散った車窓がいつまでも無表情のまま。
――足音それとも呼吸。
彼らのマスクは無効の日に放置され、気づけば此処には誰もいなかった。