haiirosan's diary

散文とか

パラコート滲む造花とハーシュノイズ

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落堕の春に、全ては呼吸器を放棄した。
彷徨う怨嗟、文字列が誘発する偏頭痛。
唯、眼前の終幕と蒼に、断線したイヤホンだけが
揺れて、揺れて、揺れ__
永遠と繰り返されるハーシュノイズ、
鳥たちがサスペンデッド・ゲームに手を振ったとき、あまりにも穏やかな死が笑みを零す。
死の笑み、剥離した紋白蝶、
蜃気楼に沈澱した街の亡霊。
「亡骸に火を放て」
頭のなか、小人のワルツが崩れる時、傀儡の兵士たちは自らの首を吊りながらも、520人を隠滅した。
止まない雨音が硝子を炭化させる。
変拍子の化学式が揺らぐ時、イロは血を纏い水は意識を喪った。
鴎はいつも死体だけを赦して
傀儡と冬の花火も、黄昏の電線から飛び立つ鴉も、夕陽のような記憶と共に薄れてゆく。
そして、いつか暴かれる世界
誰も花束を手向けることなく
記憶は青磁の海に溶けてゆく。
――終焉はあまりにも穏やかに零れた。
コンクリートの草原、機械仕掛けの兎。
空っぽのランチボックスが転がって、眩い蒼白の閃光と静かに俯く、無垢なままの子どもたち。
いつか見た脆い夢は、ブラウン管から染みだす波間の音と色彩に、無慈悲に呑み込まれてしまったけれど――

波間の温い死体、
青ざめた春を幽かな黒猫が嘲笑う。
アスファルトの蜃気楼、視えない十字架を永遠と捜す巡礼者に水は無く。
ただ、パラコート滲む造花を手に取ることを選んでしまう。
フィルムに封入された「手紙」には
静寂と断末魔のクリームソーダが漂って__

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