haiirosan's diary

散文とか

薙刀を解体する少女の眼

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仄紅い水底には、秋の牢獄から脱獄した影が彷徨っていて、季節は亡骸と化した。
血塗れの刃先を寒風に晒したまま――
みえない朱を嘲笑うことすら、誰にも止められなく
「咳ヲ縊スルルハトホキ春ノユメ」
白痴の花が咲き踊り
薙刀を解体する少女の眼に蟻地獄宿る
無感動な警報と街灯は未だに揺らめきを繰り返すから、彼女は彼を即死させなければならなかった。
春の終わり、始まりの無い地図に隠された秘密と血痕。
天蓋花
茜色の円卓
薙刀に塗られた隠蔽の__
廻間の積み木遊びは蒼白さに呑み込まれ
瓦解してゆく人形たちの行方を見失ってしまった
氷結した太陽、閉ざされた窓、炭化したカーテン
鴉すら視力を亡くし、砕け散った老眼鏡と硝子の歩道から墜落してゆく左手を、誰が救えるというのか?
水槽に投げ込まれた奇数の皿に、長襦袢の朱はより深く、藍色で水色を隠蔽すれば障子の彼方はまた止まない廻廊だということを。
どうして?
どうして、井戸に破棄した青い簪が未だに天井を彷徨っているのか?
疑問符を焼却しないと、夜の帳が開く夢すら見られない。