haiirosan's diary

散文とか

陰翳を卑下した秋茜と止血剤

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「世界の果ての果てまで硝子で出来ている」

(彼)が嘯いた地平線の彼方には氷結した蜃気楼が拡がって、淫らな猟奇殺人の色彩すら、何処か柔らかな揺らめきを湛えていた。
――終わらない夏の白昼夢を映しだすガラスは、次第に焦熱を帯びて、凡てを焼き尽くしてしまった。
それは 泡沫の焰熱
傀儡は柔らかな影だけを遺して
行方不明者となっていった
足跡も無く
影もなく
――未だ止まない霧雨を焼き尽くす陽炎に
明滅の夏が嗚咽する
陰翳を卑下した秋茜と止血剤
踏み砕かれたカルテに遺された、筆跡の無い怨嗟
晩夏の旋律が「鎮魂歌」と見做されて
死を認知することすら赦されない魂が赤く染まるる刹那を、誰が咎めるというのか?
殺意の絵筆に、紅は宿ることなく……
陰画の夕暮れに、幽かな蒼が滲み依る。
沈黙或いは
沈痛__
彼方を過ぎ去る飛行機の不穏
あまりにも静か過ぎるネオンライトは埃を纏い、滑走路と共に、転がる白いスニーカーを黙殺する。
炭酸水流るる路上の夢、泡沫は丑三つ時に震えるクーラーを無言に導く。
車輪の無い三輪車
馬の消えた馬車
風船をなくしたピエロが嬌声をあげるとき、エレベーターを浸すのはソーダフロートの残り香だった。