haiirosan's diary

散文とか

青1号沈澱せり世界

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ライムミント滲む夕刻
光の無い街灯は酩酊を惨殺し
暗澹たる点滅を繰り返す。
小豆色の被膜に甘味料を加えんとした、かつての「地図に無い王国」は、堕落のリキュールに溺れ、徐々に消えゆく薄荷色を傍観しているだけだった。
浴槽に沈む街頭スクリーン
透き通るのはいつも、拭えぬ罪の痕だけ__
硝子都市 
うつるうつつに
手を振れば
死相の笑みが
虚ろに浮かぶ

水溶性の積乱雲は、文月を暗渠に封じ込めている。
砕け散った西瓜を誤認した制服が手にした、
赤いロープ、
未だ見つからないプールサイドのスニーカー。
――聞こえない水音の旋律
琥珀色に唸る屛風は、終わらない黄昏時を描く。
そこに描かれた、夕刻に浮游する亡霊たちは、暗転を待ち焦がれる「終幕の少女」のように淑やかだった。
青1号沈澱せり世界、佇むサイレンは孤独を嘆くことも無く、ただ(其処)にいた。未だ太陽の救済が訪れない場所、青雲の沈黙が時計の針を穏やかに狂わせる。