haiirosan's diary

散文とか

透明な本に刻まれた改行

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屍夏の太陽の下
十字架すら砂塵へと帰して
青はより鮮明になってゆく
彷徨うコンクリート・ジャングル
火葬に付されても尚、血を滴らせる人々が
最後のソーダ水を拭き零してしまう
……琥珀の波が黄昏時を洗っていた。
「無言の静寂」
柔らかなブランケットが覆えば、
横たわるダガーナイフすら、
隠し通せるから、と。
――気の触れた鉄塔から
間断なく流れる警報に
世界は未だに心拍数を乱れ打つ
救済の無い罪と雨に濡れた太陽
水鏡に映る亡霊たちは
幽かな跫音すら、黙認したまま
__伸ばされた手、或いは突き放された手
徐々に浸透する鈍色に
その表情はより深い匿名性を帯びて__
透明な本に刻まれた改行は
雲路に抱擁された凍死体のように蒼く、
いつまでも淡い揺らぎを湛えていた。