haiirosan's diary

散文とか

水彩画には誰もいない

f:id:haiirosan:20210614190623j:plain

桜花のような心臓爆ぜて
春の冷たい花火は「無人の哀画」を柔らかに染めてゆく。
彼方の柱時計、ひび割れた季節
うしろのしょうめんと匕首
障子濡るる渇ききった春雨
ただ、雨にうたれた私には涙すらなく
――色、イロに拐かされた景色は
藍毒と狂った夢を火薬樽に巻きつけて
夕刻の校庭と遺失物
隠匿されし背景は淡い血痕滲ませて、混迷__
「身を投げた靴音」
屋上と傍観者の飛行機雲
砕け散ったチョークの色彩褪せて……
7の始まりは、全ての終末へと導く階段への手がかりだと云うのに。
幽かに遊泳する霧は
暁の戦慄と翠緑を抱擁し
彼女らの罪とナイフを掻き消した
拭い去れぬ血と記憶
喪われるアイデンティティ
なくしてしまった『審判』の最終頁
――霧が晴れたとき、此処には誰もいない――

切り裂かれし密は夜の罪を暴く花園と暁の夢中夢に水死体を描く水彩画に誰が潤いを渇望するのか?
誰もいないよ、この水彩画には。
だから、そっと蒼き唸りをあげて、世界

夕刻に揺らぐ紅茶のイロは__

f:id:haiirosan:20210613212831j:plain

薄ぼんやりした終幕は
何処までも冷ややかな熱を帯びたまま
唯、氷塊のような針時計を逆行させている。
――いつの間にか色彩を喪った朝焼けに
世界は焦土と化して
彼らは裸足であることを忘却してしまう

「もうひとつの天国」

垣間見の蒼に虚ろさ揺れて
いつからか濁ってしまった網膜に映る清廉な世界は、貴女が瞬く間に業火に包まれてしまうから__
雨色の果ては唯、
明滅する光に冒された影たちが横たわり、
アスファルトのベッドは
名も無き遺体を抱擁する。
炎のような水流に伸ばす手すら
彼らは黙視してしまったから
夕刻に滲みた紅茶は、
憂鬱の炎をくべながら、
逃れようのない柔らかな宵闇をぼんやりと夢見ている。
暗翳の蒼揺らいで……
冷めゆく熱病
藍色フレーバー吸い込まれて
暗幕__

水鏡に暴かれた終幕

f:id:haiirosan:20210518190411j:plain

細波の夕暮れに世界が溺れて、
游泳をやむことなき「黄昏の名」が
誰にも聞こえない凱歌を歌う――
――瞬く間に夜が忍び寄り
刹那に過ぎゆくその旋律は
いつまでも暗渠の波間を漂っていた。
……影絵揺らいで
冬を、心を、(わたし)を殺して……?

鮮やかなる死、冷熱の殺意
涼やかなる桃色の境界線
君ならざる者跋扈して混迷
不穏な指先は瞬く間に冷たく__紅く__
匿名の投身が魅せた
影絵からは出血も無く揺らぐままに終幕。
暗幕に放たれた炎は、
終わらぬ夕暮れを描きつづける
奇数の犠牲者
これは、ゆめのなかだから
眼前の深紅溢れるエレベーター、
「存在しないはずの10階」に向かう揺らぎと
「誰か」の鼓動
降り立つ先は__
水鏡に暴かれた罪と流血、
フラットに捧ぐ不協和音
水彩画に憑かれてしまった「 」の左手からのものだと、無垢なる秋は高らかに叫んだ。
正体不明のままに糾弾された「 」
静かな光さした場所
――此処には幽かなアトリエの悲哀と呼吸だけが、柔らかに漂っている。

「記録に遺されない未解決事件」

f:id:haiirosan:20180717191640j:plain

風船のワルツに水槽と呪詛を提示したことになれば

人々は私を殺人者だと指さす間もなく、

瞬く間に罅割れた硝子に

正常を咀嚼する解釈すら皿の上の「豚の血」をワインに一匙
最期の記事に載せられた死亡は、
紛れもなく春雷の残り香だった

かつての栄光と希望は穏やかに隠蔽され、

フェンスを掴む少女の右手は握力を忘却し、唯、無慈悲な太陽の傷痕が

空の境界を亡骸へと変換する。
__見えぬ神は街の色彩を消し去り、蒼白な左手が墜ちてゆく。

「鈴蘭の造花に憎悪を刺し向けろ」
変容した羽虫は、喪った羽根を自傷しながら、そう呟いた。
大地を這い回る毒蛇と綿飴の不可思議

4階の窓辺に映る縊死体とカクテルに奇数は存在しないから――

春画のネオンを隠匿する、いつかの桜はノイズに揺らいで

街の怨嗟と埋められた、幾千の死体の幻に揺り動かされている。
――記憶 渇ききって

私の唇から幽かに零れた敗血すら

「無」を緩やかに震わせただけだった。

西日に拐かされし黄昏雲、

痕跡もなく「記録に遺されない未解決事件」として、4月は黙秘を続けた。
ただ、砕け散る(死)を選び取ったフィルムには、忘れえぬ記憶として確かに_

クリームソーダに冒された境界線

f:id:haiirosan:20180128170710j:plain



積み木の街は、逆行世界の夕刻に呑み込まれてしまった。
網膜に刻まれた鳥たちの行方
逆再生されるサイレンの悲鳴
――揺らぐ影も躍動するナイフも正体を喪い、

体温無き戦場に置き去りにした指輪の記憶すら、名も無き人々は忘れてしまう。

琥珀の蝶々が飛び去って、冷めきった秋茜は自らの失血死を偽装する。
少女たちの死に贖罪は無く、枯葉の塹壕には火炎瓶が間断なく投げ込まれた。
焼け落ちたのはきっと、あの日の朝明けだから

此処では軌道を喪った星星だけが呼吸をしている__

「剝ぎ取られたガーゼの秘密」

造花と花火、喪失を水に浸したのは、あまりにも無慈悲な時雨だった。
毛細血管散りばめた昼の夜、
血の滲むベッドの焦げ痕
燃えあがる空を糾弾するのはきっと
――

火を放つ奇数、むらさき飽和する、
――或いは融和と変死。

白昼はいつも夢を夢とユメノ

淫らさに砕け散った宝玉の色彩に気が触れて、
イロが浸す透明な水、硝子の罅__
かつては白磁を湛えていた少女たちは、可憐なままの左手を奪い合う。

クリームソーダに冒された境界線には、未だに罪と罰の赤が隠されている__

そう嘯く老賢者を横目に、この世界は再び、炎と血による浄化を選択してしまった。
春の中立地点、太陽だけは純真なまま

全てに不公平無き熱病と昏迷を与え……
――蜃気楼を忘れたはずの円卓上が、ほんの少し揺らいで、壊れた僕の網膜ト

『こころ

えた。

プールサイド、花火と私の死体

f:id:haiirosan:20190217211322j:plain

奇術倉庫-プールサイド、花火と私の死体 Poolside, fireworks and my corpse by 奇術倉庫 | 奇術倉庫 Magic Warehouse | Free Listening on SoundCloud

 

プールサイド 溺れる花

夏の色は 蒼く淡く

プールサイド 溺れる夏

君のイロは 腐りきって

 

ぼんやり 私の死体

夏色 青く染まる

 

(プールサイド 君の花火 プールサイド 私の死体)

 

境界線 壊れる花

君の色は 赤く脆く

境界線 壊れる夏

君のイロは 渇ききって

 

だんまり 花火と 私の死体

夏色 朱く染まる

 

(境界線 君の花火 境界線 私の死体)

 

f:id:haiirosan:20161008165539j:plain

 

水彩の静脈血

f:id:haiirosan:20181231095650j:plain

快楽の落第、罪悪と災厄

とんかつと忖度、狡猾と謀殺

蝕紅の柔らかな抱擁

止血剤が黙視されて

触れる指先震えるままに外科室の扉叩けば

さすらいの斑紋は未だ安穏とした公園前を騒乱に陥れた

しかし殺傷と殺生を誤読したカフカのFは暗黙のまま沈黙
ざらつく市役所は火薬と白けて堕落

半透明の私は着地点の無い死者のまま。

浮遊する金魚に憧憬を抱け!

浮遊する白骨に長襦袢を催せ!

王のような爪痕はいつも化膿した咆哮を不規則に刻む
へばりつく刑務所にショパンと暗譜
錆びつく弦、磔ル神、前髪、血染の三つ編み

「天井裏のホルマリン」

屋根裏の君は二重の鉄条網にもがくままに笑う
地上600mのカッターナイフはいつもカナリアのメロディー

不協和音と黒蜥蜴の舞踏会――左手首の爬虫類は真実を艶やかに描きだす

始まりの無数の道化師のワルツ

拡声器の革命と運命すら交錯しない交差点を傍観して、

私の消えた屋上はいつも裸の夕日を曝け出す。

解凍されぬ空中庭園の彼方、柔らかに閉じてゆく夕景は、出血のような光に充ちて――
散らばる水死体と日傘、裸のハイヒールをこの世界に暴きだしていた。

水に沈む浮き輪に染みた、極彩色の鬼の笑顔

折り重なる水槽に隠されし甘い毒は、狂い咲く蘭鋳の遊泳を切断した。呼吸を失ったまま、境界線すら無き31を、死体のような未来を
夢うつつに――

春はチル 解決されぬ冬のセーターとオアシスアイス

桜花爆ぜ、淡く遺るは水彩の静脈血
柔らかな積乱雲、そっと去って――
華やぐ花火に深度不詳の火傷を負えば、いつかの青空も灰色に俯く。