haiirosan's diary

散文とか

薄荷飴溶けゆく夏

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薄荷飴溶けゆく夏に倒れ臥し
遺体まさぐる蟻と黒猫

雨酔いに映る極彩揺らめいて
終わらぬ夜と狂い咲く夢

――ブルーキュラソークランベリー溶けて

澄みきった水色に血飛沫散るとき

確かに此処に存在していたはずの

「穏やかな遺体」はトゥーシューズを履きつぶして

揚羽蝶は哀歌に浸されたワルツを踊る。

飛べない翼、それとも飛ばない翼?

暁の眩き光に、炎は消失点を喪う

繰り返す鈍色

繰り返す出血

鋼鉄の蝋燭に夕刻の焔が灯されて

行方不明機の排煙が彼方の世界に終焉をもたらす__

催すような暗い影は私が「わたし」であることを奪い去って、

夏がまた嘲笑うことをやめない。

現実の組織化された混乱、溶けていく無意識

業火の蜃気楼、私が佇む奇数階に不穏な蒼が零されたから――

ここで視ていたリアルの遠さ、踏み外したままの新宿の灰皿が行方不明者となる。

揺らいでいたスクリーン、咳、咳込む音色に革靴が浸透圧に潰されて

二酸化することは罪なのか?

気の触れた潮騒と4階の窓が、溺れるだけのクロールを描く。

焼け落ちてゆく逆さまの海。
全ての二酸化炭素は無表情のままに

かつての青空と蒼雲を轢断してしまう。
偽りの夕暮れが永遠の懲役刑を告げれば、

あの日の鐘とアイデンティティは「なかったこと」になるから――
やがて、柔らかな祈りを放棄した貴女は唇をずっと噛みしめていた。

地下鉄、血漿散る水無月

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地下鉄、階下に横たわる海柘榴。

声にならぬ声が刻まれた39面

奇数を刻む段数に、偶数はそっと唇を噛みしめる。

剥がされた革靴、暴かれたハイヒールの行方
紅に濡れた花片は艶めかしく、階上の紙煙草を静脈血で浸せば

此処には忌避すべき喧騒も、モノクロームの靴音も

そっと柔らかに消え去ってしまうから。

白黒を染めるのはいつも、被害者じみた殉教者の血だって

記憶の子供たちはいつも、砂場に「彼」を埋めていた。

血漿ばら撒く春の唄、(曇天に潰れた心臓)は、安らかな吐息を吐きだし

プールの底の水死体を火葬するために奮闘している。

渇ききった戦争はいつも4月を鮮やかに染めて

透き通った雨すら、紅き長襦袢を纏って――

柑橘、浴槽、風鈴砕けた 夢 

――神の手は滲むピンク

じりじりと夜をゆく

夏の境界線、肌の死を忌避したいから私は?

試験管に閉ざされし造花は、その色彩を瞬く間に散らして。
8限目、理科室の夢うつつ
心肺を纏ったドレス
静脈ひた奔る硝子の靴
――世界は再び濃霧に覆われて、匿名の遺体となった。

街を包む水色の抽象に、少女たちは唯、その濁った瞳を浄化してゆく。
清廉さに浸された景色の片隅

僕の両目の充血は、未だに逢魔ヶ時をさしたままだというのに……

成層圏、紅色のオーケストラ

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淡きリキュールに細波が抱擁を求めて

藍色の頬は幽かな熱を抱く
あの空と海(のような)陰画はやがて切り裂かれ

其処に「七限目」はもう存在しなかった

薄荷ざわめくいつかの空白

奇数と偶数の狭間、成層圏とオーケストラ

柔らかな枯葉がワルツを奏でる
――彼方、波打ち際のような雪雲の五線譜が揺らぎ

季節はまたひとつ足音を消してしまった

宙空のサーカス業火に溶けて、ブランコから崩れ落ちるサルトルのおうと、唐突なる悲劇に台本を紛失すれば、誤った焚書にあなたは鉄の牛に寝転んで――
熱帯夜の永眠、

極楽鳥が彩る炭化した天蓋に視る夢は

あまりにも黄昏色が深くて――

密林の地下鉄 横たわる海柘榴
紅に濡れた花片は艶めかしく

階上の紙煙草を静脈血で浸せば

此処には忌避すべき喧騒も

モノクロームの靴音も柔らかに消え去ってしまうから……

「そして桜が血を滴らせる。花瓶のアリス、アリスの造花に過敏性な早咲きの少女、口紅の食紅があないとしあがないとし、死体の肉で最もワルツが踊れるのは膵臓であり水槽で水の中のナイフと少年がスマートフォンを翳すのは3104丁目のアルビノ金魚前だってこと。そう、新宿アルタ前なんかじゃなくて」

紫鏡の水彩画新宿

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紫鏡溶かしこんだコンタクトレンズ、不規則に揺れる十三階段

夕刻の悲劇は紛うことなきクライマックス、見つからない靴下

着色料の色彩が紫陽花の悲劇すら台本から引き裂いて、私は舞台のシャンデリアの下敷きになった。そう、テーブルクロスに隠されし殺意と虚無を、どうしても抑えることができなかったから――

仄暗い羊だけが許されし円卓上

姿なきヴァレリーは盤上の猿の首に「魂を肉体から分離させるものは、生であって死ではない」と嘯く。

視界、世界、後悔、渇ききった瞳に映るのは――

夢うつつうらてんはんにてんはんに反転を輪廻して

歩むれば朧なりし夕暮れと
影消えゆけば私は誰なの?

血を伴って着地したラストシーンは、あまりにも喜劇的で

私の透明な死体は黄昏に溶け合って

冷たいアスファルトの水彩画になった。

血に染まる右手で描かれた水色

水芭蕉色、イロを為さずして堕落

熱病の揺り籠で色彩は正気を喪い

死刑台の上にて艶やかな教義を叫ぶ神らしき空虚

弁証法の断頭、意図的な枯葉を蹂躙するのは無垢?
そう、最期の蜜蜂が貴女の花片に触れた時、世界には誰もいなくなった――

むらさきいろのカーブミラーに映る私の死体は微細に解体されたまま微笑を浮かべて赤ではない血に染まる白いワンピースはきっと罪悪と再審に濡れたままだとこの雨は永延と沈鬱な旋律を刻むからもう此処にはいられないんだと鏡の匿名が縊死すれば幽かな罅が少しずつこの世界を歪ませてゆく。

新宿(であるはず)のエンドロールは、潔癖なまでに色を喪い

革靴の死者の行進は脆く崩れる
此処では鮮やかな魂ほど打擲されて

唯、傀儡の糸か蜘蛛の糸かの選択肢を、首のない冥王に迫られるだけだ。

薄羽蜉蝣の記憶

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血小板の夕暮、君の血は致死量を超えてまで夜を忌避する。
心のシャッターに幽かに刻まれる爪痕
死への欲動は、浴槽に投げ込まれた造花が魅せる快楽と夢。
呼吸を審判する水の中には
錆びることないナイフが揺らいでいるから
__
彼方の警告音
泡沫に眠る雲に簪させば
不穏なる空はそっと匕首を奔らせる
不協和音の交響曲と鴉の断末魔……
悲劇は足音もなく
あまりにも澄んだ化学式を伴って此処に。
いつか、解放されてしまった外科室
切り裂かれた季節は血を抑えることなく――
暴かれた色彩とうな垂れた刹那
沈黙に浸されたメスが
柔らかな肌を選び取るから

白い肌と冷たい火焔 打擲されし暁の茜
奇数だけが鮮やかに炎上する数列に
静脈血に染まった刃先はいつかの空を彩る
――薄羽蜉蝣纏わりついて、
私は零れ落ちた血と紫の記憶を、
少しばかり思いだした。

むらさきのそらと痛絶

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刹那の紫鏡ひび割れて、あの日の少女は「死の部屋」を描くことを選び取ってしまう。
鮮やかに痛く、-を刻む筆先、

不鮮明な色彩に誰も拍手を送ることなく、

栄光と光に充ちた記憶すら、
やがて翳んでゆく――

暗い太陽

暗い笑み

彼岸の白昼夢は止まぬ秋雨と

死にぞこないの揚羽色が網膜に揺らいで

__墜ちて
泣き濡れたワルツを踊る紫式部と花花は、私の渇ききった心と血管を

終わらぬ「痛み」を伴って締めつける。

そう、夕暮の出血は冷たく

あなたの視線も、みんなのしせんも冷たく

アスファルトに染みこむドライアイスの暗影

夏の墜落花火、六月はあまりにも刹那的で終末的だ。

終幕の業火に抱かれた60階は、其処から身を投げた後悔に、一匙の熱病をもたらした。
暗い影と化してゆく人の群れ
傍観するブルーバード飛び去って
彼方のサイレンが「なまえのないエンドロール」を手繰り寄せる。

逢魔の坂は誰もが正体を喪い、その心は轢死体へと変換されて。
「むらさきのそら」隠蔽される真相に
嘆きの悲鳴すら渇ききって――
私は唯、路上の埋葬に夕暮れの火をくべつづけていた。

リキュールの夕刻、死亡記事の行方

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カササギ掻き毟る夕刻

蜜柑曳き殺した夕景

ページをめくる指は一つ、また一つと失い……

死に至る病』の最終頁に、私は氷結した希望を溶かしてしまった。
6月、渇ききった唇、口紅の水死体(は)美しき季節

沈まぬ太陽に左手を振れば、

此処には憎悪と無感情が血に染まり__ 

秋雨の跡、死者への花束散りゆく午後__

遺失物の絨毯を蹂躙する葬列は

朱に括られた自らの首を傍観し、何処へ向かうのか? 

裸足から染みる敗血

ヒールから崩れた足音

血染めの教会に零れゆく旋律

イロが融解していく時

目隠しのビルは奇数を忘れて__

半開きの口 悲鳴すら不協和音と正体のない笑み
新宿の境界線 暗闇渇ききった暁
――私は此処に忘れた何かを、光のないアルコールと共に思い浮かべていた。 

リキュールの水平線が黄昏に揺らぎ

睡魔と死亡記事遺されて
酩酊の幸福論

意識外の絶望

翼を切り裂くカッターナイフは水色を帯びて……。
暗翳から見上げた夕光は、唯、焼けつくような眩さを湛えて――