haiirosan's diary

散文とか

水のないプールのナイフ

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隠されし藍を求め彷徨う巡礼者たちは、
蒼影の砂漠に引きずり込まれてしまった。
自らの正体をなくし
傷無き破傷風に悶える暁
鈍色の奇数
偶数で瓦解する膿のような、
沈黙のコンパスの針が心臓を貫く時
青ざめた太陽と月が融けあうから――
パステルブルーの沈黙
凝固した泡雪に血が滲めば
やがて訪れる黄昏が
拭い去れぬ闇と
鋭いナイフを携えていることに
二重の君は気づく
上海瑠璃揺れるチャイナブルー
春の昏迷に黄昏し造花の笑み
記憶溺れる着色水に
砂熱の夕焼けが突き刺さって――
躑躅揺れて気の触れた夏
沙熱に溺れ
焦熱に壊れ
投げ込まれた心肺
50の固執に水色笑う
水のないプールを愛撫する追放者の祈り
――蜜なき救済に
蜜蜂の鼓動が崩れ落ちた時、
あなたは左手のバタフライナイフを
錯乱のままに酷く握り締める……

石榴飴の着色料は死の色

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夜色のカマツカの甘美に揺すられて、通続的な水音は私に緩やかな酩酊と睡魔を催す。
……仄紅く冷熱を帯びた水底
そこでは秋の牢獄から脱獄した影が
ゆらゆらと彷徨っていて
季節は亡骸と化した
血塗れの刃先を寒風に晒したまま――
砂漠色、毛細血管、蠍、砂塵
砂の雨足に煽られ偶数の残影を引き摺るのは反転する車輪の下、四月の亡骸だった、
散り散るちりぬる花火、逆さまの視界
桜花夢魔病ム毒蠱毒狂るる遺体視る――春を誤りし鼓動なき温もりも無き身体埋まる花びらの下、酒宴の果てに遺るのは鬼色の君と、青いハンカチを選択してしまった私、
ことばなきわたし
あおざめたさいれん
ことのはかれてしたい
__
感情の無い蒼白が世界を抱擁して、
彷徨う人形は欠損に欠損を繰り返す
死体の温もり 滲む茜色
呼吸停止の季節
動かぬ針時計
昨日公園に佇む鬼の形相をした少女は、未だに隠れんぼのお終いと、夕暮れ時間を待ち焦がれているから。

カルキ無き水槽

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睡蓮の葉に隠された遺体
その冷熱を夢みる魚は
いつの間にか虚ろな午後の陽射しに包まれて……
網膜から剝離するスクリーン
曖昧な祝祭のような、
綿飴のような火刑に
自らの体温すらも忘れてしまう
障子沈められた蒼白
カルキ無き水槽に笑うのは
シャッターレンズと化した群衆の目――
その目に映る金魚の眼は
漆黒に浸されていて
浮游するばかりの光は
やがて青の紋様に 更なる色を湛える
漂う青、オアシス・アイスが乳化して
棗椰子に仕組まれた榴弾が3を高らかに叫べば
砂漠都市は焦土と化して
砂塵の譜面のFin.が見つからない
即興な牛頭の赤子が即興の不協和音を歌う
微かな「水」を掲げていた王座も
その義眼を二十日鼠に掻き取られて__
彼らは刹那の吐血すら、
蒸留酒の痕跡すらも、
殺人未遂として審判へと差しだす
蜜柑色の少女が最期の炎をくべる時
此処にはもう何もない

上海瑠璃と麝香唸る雨

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アレゴリーの花花融解して、かつて水色を湛えていたはずの空も、天鵞絨の終幕を垂れたままだ。
――やがて、全ての輪郭を曖昧にするイロに濡れて、(あなた)の思考と左手に茜が滲む。
上海瑠璃と麝香唸る街――レプリカのカクテルが酔酔を齎す時、私の網膜はステンドグラスの散りゆく幻と金箔雨散る幻覚に乱されて……
最期に映るのはきっと、反転と色素によって暴かれた、この世界の深層だから。
鬼の遺灰縺れあう此処は血の菜畑
忌みの深淵に漂う曇と村雨淡く
彼方、うぐいす色の現世は生ける屍揺らいで――深紅煌めく境界線に
あなたの瞳は血線を滾らせて
蒼き陽炎揺れる八月のスクリーン。
水を亡くした世界に齎す、潤いなき幻覚に溺れれば、足下の蠍の跫音すら気がつかないのに。
残像染みつく刹那、溶けゆく記憶への救済措置として、色の無い錠剤を咀嚼して――

濾過なき水と藍ざめた心臓

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絶夏の花火を夢みた花束は

外科室のような世界で醒めない夢と

冷めきったゆめうつつを彷徨い

霊安室と暁の扉を静かにノックしたんだ

死に覆われた、凍結せし桜花の冬

凍てついた笑みを零せば、氷柱なりし季節の骸

――透きとおるままに融解すれば

其処には誰もいない水色の風景が拡がっているから……

迷宮のようなクーラーボックス

熱病と春に酔い痴れて 烏揚羽纏わりつく花のふり

青い炎に焦がされたまま

咲き誇り滴る蜜はヒ素の色

蛍火うつろう雨脚切り裂く宵の音

明滅を輪廻する幻影或いは実存

光散りゆく夏の記憶は無く――

私は唯、アスファルトの感情を

ひた奔る情念に焦がされる夢をみていた。

灰色の水槽 黄昏屛風に踊る金魚も

いつかは呼吸を喪ってしまう

濾過なき水と藍ざめた心臓から零れる

素毒の着色料が夕刻を宵へと変換させて……

溶けない障子模様と琴弦

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カーブミラーに紫鏡描く夕刻
禍々しく剃刀滲む藍空
あなたは畏怖に浸された眼をしている
「どうして?」
――背後に迫る死を纏った足音も、
群青の肌から滴る静脈血すらも、
やがて訪れる深い宵闇が洗い流してしまうのに――
水鏡に映る平行世界は
夢現にも増して鮮明なる翠緑が遊泳している
硝子溶けたままの水水に
酔のままに泳ぐ奇形の魚と水死体は
いつまでも綺麗だったから
終着無き水槽を這い回るのは
轢断された幽体の金魚だった
張り巡らされた溶けない障子模様と琴弦
流れだす動脈血すら
不鮮明であった濾過水を彩り
無機質な光は永延と
罪の水に浸された世界を暴く
躑躅零れた花びらと蜜に触れれば
私であったはずのレプリカは
脆くもジェンガの一端として
真夜中のような深淵に堕ちていった
擦り剥けた膝に群がる蜜蜂のような亡霊たち
痙攣、動悸すらも
無感情のままに意識だけが遠のく……
そう、あの日の夜明けは
剃刀が刻む浴室みたいだと
水彩画に沈む「知らない君」が嘯く
死んだマンションの暗い暗い影狭間の輪廻に
安寧を求むるは後悔なのか?
いつか、明滅する燈籠の青い記憶すら、
闇を湛えた紅に轢き潰されてしまったのに――

百日紅四二八七

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百日紅のような夢魔が流す血は影色の境界線と
フェンス絡まるサイレンの悲鳴
百日紅誤読重ね薄ぼんやりした視界と
群青のスクリーン――
わたしの血と罪に染まる手すら、
世界を包む、
あまりにも深き断絶に色を喪い、
意味すら失い……
水色の陰翳を白磁の紅色が浮游する。
決して傷むことのない傷に、絆創膏の救命艇が足掻くままに、刹那の中は燃える朝焼けのベッドに眠るふりをした眠れないジルの瞳にいつまでも焦がれていた記憶すら、やがて柔らかに薄れて。
痛み、傷、出血、この先が致命傷にならない傷だとしたら、私はもう――
そして、三番街の幽霊の子どもたちの見えない出血は、無邪気なままに瞬く間に止まり
4月の夢幻は包帯揺らめく春風と共に消えていった。
藍色

四二八七開く
油絵に齎す炎熱も無く
揺らぐさざ波攫う四五九一五六四
うつろなわたしがゆうきてきにしんだとうじょうせんえんせんがいけんがいのよみじでゆれる「彼岸花は」
まぎれもなくうつくしくあなたのようなわたしのれいあんしつのはだをすこしばかりあかくそめたんだ