haiirosan's diary

散文とか

理科室から滑空する夢

 そう、僕の17歳はまさに密閉空間に自ら嬉々として入り込んだような、そんな心持であった。

 外の世界よりも内なる世界。五限目、理科室で知らない誰かの好奇の内に刹那に燃え尽きる微生物のような、そんな人生しかないんだろうと、僕は図書室の窓際で涎を垂らしながら想像の海に沈んでいた。浮かぶランタン、僕を燃やす炎は紅では無く、あくまで冷めた、まるで業務用であるかのような無機質な青い炎。

 水深5000メートル、僕らの夢は醜い雌豚と雄豚が敷き詰められたノーチラス号のぼやけたLight或いは、愈々酷く耳をつんざく現実的なチャイムと共に終わりを告げる。

 目が覚めた僕は何時の間にか校庭の端に居た。草臥れたボールが舞い・墜ちる中、快活な彼らと彼女らは互いの「首」と性器を奪い合うような、カーストと過食による加齢臭漂うな脊髄と臓器ごと捥ぎ取り合う夢中夢の中で汗と歪んだ笑みと叫び声を散らしながら。

 傍観者「であるしかない」、光を浴びることのできない、多分これから先の人生に於いてもそうなんだろうと思うしかないような、そんな朗らかな秋が嗤いだす十月の夕暮時。電池が切れそうな小さなipod、君がくれたConverseも黒い穴が無残に空いて。

 僕の未来は過去も消え去ることが出来るのだろうか?そんなことを思い浮かべながら入道雲が蠢く茜色の空を傍観する。

 一日、また一日が過ぎていた。ギターを弾くことも、赤い本を眺めることも意味が無い。僕はひたすらに10mmの煙草を吸い、こっそりと酒と本を呑み、そして気にいらない文章と肌色のクッキーを切り刻んでいた。

――数年が経ち、僕は或る日久しぶりに公園でバスケット・ボールをやってみた。

 思いがけず決まるフリースロー、レイアップ、夏空に滑空する無回転の球体。

蟻の群れが微かな拍手と喝采を浴びせるような、惨めな優越感。

 ああ、けれどほんの数十分で辞めてしまった。まるで2クォーターのハーフ、トイレに籠った後にチェダー・チーズが溶けかかったパウンダーをMCDで躊躇いながらも捨てるように。

 だって壊れそうに息が激しく、このままだと心不全という不明瞭な表示で、「死」という惨めであり光栄であるステッカーを灰色の田舎に貼られてしまうから!

 冷たい夏、ひどく猫背のまま、酷く千鳥足のまま、それでも汚れた手足を温い水道水で綺麗に洗い流した。そして、僕は静かなバーか何処かで刹那に親蜜を深めた女性と気づいたら白昼に寝ていたことすら、部屋のMac bookを弄っているうちに、あの娘達の誕生日と共に忘れてしまったのさ。