haiirosan's diary

散文とか

青蘭血の滴る星屑畑

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世界が呼吸を無くした時、12月は幽かに熱を帯びた。絶え間なく続く雪が揺らいで見えるのは、石鹸箱一杯の粉のせいではないし、渦巻きキャンディーのもたらす台風21945号の頽廃的な進路のせいでもない。
長靴よごれたヨモギの悲劇、星月夜に朱が足りないから、私は自らの喉を切り裂いた。38口径で撃ち抜かれる場面、その穴は暗い暗い輪廻への獣道となり、私の首に刻まれた断面はセカイとワタシとの境界線へと変わる。誰ひとり越えられない、熱病に犯された赤道。

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だが、未だに病まぬライムの木。首吊りの庭に投げ込むカッターナイフをくわえるのは目隠ししたままの政治家か、或いは涎を垂らしたままのシェパードか。
檸檬刻まれる断頭台、擬人化した異邦人。彼らを縛るものはエルサのレム睡眠だから、夢に夢を重ねたミルフィーユ、 意味に意味を積み重ねる餓鬼の積み石。三途の川は国道35号線の果てにあると叫ぶラッパを求めた彼女は、ベスパに乗ったまま断崖絶壁から飛び降りてしまった。
未だ訪れぬ終末。濡れた薔薇は赤いままで、深い蒼に染まることもなく曖昧な血を流し続ける。

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