haiirosan's diary

散文とか

The Sound Of Dyeing A Cocktail Tone 2

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いつかのエアメール、残り香バニラが地上902mでワルツを踊る

「     」ーー沈黙に浸された手紙と香り

世界から誰もいなくなった十二時間を彷徨う

 

線香花火のように散る不可視の言葉

青に殉ずる無言の芳香と祈り

ターミナルに転がる赤い靴、ドレスシューズ

行方不明者として記録された239は裸足のまま

行き先は煉獄か、それとも楽園だったのか?

砕けるカクテルグラス、遠ざかる影
全ては刹那に消えてゆくけれど、あの夏の音を忘れることはなかった

茜色のリキュールが水平線に火を放つ、その瞬間

彼らの目に浮かぶエンドロールはメロディーに溢れ……

 

……フィルムリール切れて

人間椅子が揺れるラウンジ

「アイスピックを突き立てれば愛憎が溢れる」

誰かがそう呟いたけれど、誰もここにはいない

時計の針が鉄条網に変換され
壁紙の青が剥離して
僕らは赤い部屋を転がる毬を眺めている

蒼白の貴族の影、空白の万葉集

ノスタルジー、それとも懐古・追憶?

鹿革製の毬から溢れでるメープルシロップ

翻訳家は言葉を喪い

透明なカーテンはゆらゆらと揺れ続けるだけ