haiirosan's diary

散文とか

Cigarette in your bed

朝霧のブランケットに包まれて、紫陽花が紅く火照る

彼方のライ麦畑も渇ききって更新される6月の永遠

つかまえたのはサリンジャーの理由なき38~78頁

『キャスターで浄化されし胡蝶蘭と摩天楼』

アスファルトのベッド、或いはベッドがアスファルト

マッチ棒の焼身自殺が「   」を訴えれば

名前を忘れた少女の吐息が残酷に棄却する

誰が名前を忘れたのか?

番号で告げる着飾ったダブルベッド共か

それとも、多分冷たい眼のままの僕だ

嗚嗚、太陽が眩しい

群衆のローストに涎が止まらない蒼白の空

太陽が眩しいから皆カーテンを閉ざしたまま

日傘をさす女ばかりが立ち尽くす氷塊の街でしゃがみこんでいる私は17歳で嘆くことを忘却してしまった

11階以降も追い込まれる地獄の季節と剥がされた黒猫

ねえ、11階からコンバースと植木鉢を投げる僕を凝視しないで!

――彼女の澄んだ瞳はスカートの深淵に隠されたままだというのに、

叫ぶ私の肩にそっと手を載せる

顔の無い恋人たち友人たち家族たち

彼らに煙草を差し出すけれど、彼らは注射器と感情を求め続けていた

震、え

る手で、凍てついた裸足のままで

皿上の氷砂糖が熔けるまでのショーウィンドウ

マリアのくちづけにDrink Coldの選択はなく

無言の製氷機が告げる夜の色彩は……

黒こげの白衣の裸には誰もが無関心

透明な雨の夢現、コールタールで洗髪する子供たち

フィルター越しの救済或いは死を求めるのは

プラスチック・ライターに犯された毛布を求めるのは

ウィンカーのでないセダンだけだって

茜色のマリアのダイイング・メッセージが告げる

30のモーテルの鍵を探す道化師に31号室への道標は見つかるのか

30の死蝋に火を放てば、31の狂炎に狼煙はあがるのか

――紫煙が無慈悲な青空を愛撫して、水無月は静かに揺れ始めた