haiirosan's diary

散文とか

ブランデー・ボトルが砕けてターコイズネイルは哂う

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雑踏に打擲されたブランデー・ボトル。

明滅する世界の構成物質に対して異議を唱える者は無く、ただ飛び去ってゆくカラスの群れを傍観していた。

紅色の空から桔梗の心臓が降り注ぐ。私たちは五月雨の記憶を溶かしてしまったけれど、アイスボックスに閉ざされた奇形は浅草十二階にて、今も翠雨のパレードを繰り返しているような。

未だに0:00の空は吐血を抑えられない。彼は青い衆愚と無感情の時の中で独りぼっちだから、そう呟いたブランデーの残り香もまた――

「林檎と桜桃の轢死体からあの琥珀が生まれる」

スピリタスの街頭スクリーンが昏迷の果てと燃え尽きた燕尾服の標本にエミールの40%,750mlにマッチ売りの少女と赤ずきんの少女の混濁に、あまりに分解されたチョコレートサンデーに紛れ込む檸檬の不発弾。

歪んで視える校庭、それとも交差点。冷たい視線、冷たいコードが私の切れそうな一弦を押しつける。もう飛べないテレキャスターの沈黙が透明な通続音として日々を繰り返す。

死んだようなミリンダのカールコードを断線したのは多分この世界の罪だから、ターコイズネイルを愛撫する私は赦されると書き残したブランチタイム。その背後でブランデー漬けの苺が私の首筋にダガーナイフをあてていたことにも気づかず、永遠のクーラーだけが黙示録を詠唱していた。

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