haiirosan's diary

散文とか

「もし、最後の一人だとしたら、」

f:id:haiirosan:20160604172229j:plain

アルコールの用水路にソーダが流れている、蒼色の刹那、狂いゆく%に浸るのは心か身体か。或いはポップコーンかもしれない。28××年、禁酒法の嵐吹き荒れるいつかのシカゴで観た映画の記憶と記録よりも、彼方のミシシッピ川を游泳する藍色のカササギの羽音が私の鼓膜を緩やかに酔へと導くから。

救済の夕景を君は求めていた。詐りの橙色、真相は蒼白。十字架に刻まれしカナリアの遺言は薔薇に隠され、海岸線の無慈悲に溺れてしまう。誰もいない灯台、誰もいない水平線、可憐なプラム・タルトすら粉々に砕け散った世界に、誰が円卓に紅茶を注ぐのだろうか?

透き通った注射器がカーテンを引き裂いていた、藍色の放課後、紅色の理科室、ビーカーが散乱した車道に拡がる水たまりと終末の狼煙。
僕らは影を喪い、意味を喪ったまま葬列に参列する。鉄塔に絡まる凧が鈍色の風に包まれて、いつかの火葬を待ち焦がれている

「もし最期の一人だとしたら、」
少女は自らの空想にクロールを繰り返す。誰の救助も無い沈黙の蒼、世界を刻むのは偶数制限の数字配列だと。秋雨の中、瞼の下に紫の炎が拡がる、鳴り止まない目覚まし時計とサイレン、血を纏った少女は然し澄んだ眼のまま静かな微睡みに身を任せている。