haiirosan's diary

散文とか

チョコレートミントの有刺鉄線

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――巳の刻に僕らが彷徨う螺旋階段、最後に待つのは琥珀色のエンドロールか、それとも__
凍傷を起こした秋の青い昼、静脈血の彫刻が色褪せてゆく8限目の理科室には、唯スカーフの残り香だけが、煙るストーブと灰色の紙芝居で色喘いでいた。
__やがて喪われていく秋の牢獄と色彩。焚き火に抱かれた茜色の刹那すら、誰かの渇ききった靴音に掻き消されてゆく。
チョコレートミントの有刺鉄線、誰もいない公園、消えない吸殻、ソーダ水にヒ素、鳩と無邪気な疫病、火が放たれたシーソーゲーム、首吊りのマフラー、注射器の砂場、乳母車の人形、三面鏡に写る4番目、行方知れずな風船の三原色、砕かれたコンタクトレンズの罪を(誰に)擦り付けることができるのか?
__8061番地、罅割れたフロントガラスに突き刺さるワイングラスに神の不在を嘆く鴉たち……断罪の薬莢を焦がすのはいつも無垢な心臓だと彼女らは嘯く。冷め切ったアスファルトに拡がる壊炎、道標が十字架へと変換されし時、最期の晩餐に饗された血染めの薔薇を「モノクロだ」と糾弾するのは__
「碧が収斂する刹那に貴女は死んだ」
「平行線の夢から脱落した少女は、紫鏡の夕暮れに引きずり込まれた」
ピンボールボルドー漬けの心臓から放たれる時、母胎の貴女は円環構造の海を見失うけれど、その高く高く上がったファールフライは藍空にも、誰の記憶にも遺らなかったから――

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