haiirosan's diary

散文とか

誰もいないはずの後遺症の窓

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――鳴り止まない蒼い警報、アスファルトを這い回る錠剤の粉塵、真紅のカーペットを染めるのは青ざめた焼夷弾だと、誰が認めるのか?
遠く、遠く、藍霧に潰されたHighway509,ひび割れたバックミラーに映るのは終末のスニーカーと、茜色に乱れた手形、赤い涙零す誰かの瞳__
硝子の墓標、如月悴む×曜日を彷徨う亡霊。眼前に表れた血塗れの着ぐるみと、彼女を連行する黒い貴婦人はあの3番線から身を投げるのか?
誰もいないはずの後遺症の窓から覗く誰かの縊死体は(私)のような姿をしていたから、わたしは地下鉄3番ホームにどうしても降りることができなかった。
やがて、逢魔ヶ時が紫の絵具を手に取って、樹海のような街は色を喪う。
――誰の呼吸が、言葉が真相なのか?嘘は影イロ、穴の空いたカンバス、剥がれたフィルムの先に、もう暁光は射さない、と__
歯車が軋む夏の氷上、切り落とされしブーゲンビリア、飛び込み台は満席だからプールの水はいつも蒼い、涅槃頽廃、六道酩酊、時計の針から紅色が脱落したのはいつ?解らない六法全書を読み耽りながら、私はコーヒースタンドに火が放たれるのをずっと待っている。
霙に揺らぐアスファルトは色彩を読み耽る。無人の車(だけが)暗渠を這い回るけれど、それらがイロを汚すことはなく、止まない慈雨と共に永遠と物語を刻み続けていた。