haiirosan's diary

散文とか

304号室、バスルームに投げ込まれた鋸と花瓶

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花瓶に活けられた生首を視ていた。
扇風機の涼音がなる12月、カーペットに散らばったアイリスは徐々に色と名前を喪う。
匿名に封鎖された304号室、バスルームに投げ込まれた鋸と、ワイングラスに充たされた血が渇く時、鴉たちは爽やかに飛び立って、何処へ――
傘立てと遺失物、戻らない眼の光と淡い夢。
水溜まりに一匙の砂糖と静脈血を垂らせば、曇天に虹が描かれる。そう嘯いた少女は藍色のアイスティーにマッチを投げ入れ、柔らかな午睡は灰燼へと帰す。
羅針盤が貴女の心臓を細切れにする。電線から滴るアルコールの慈愛と救済では(無い)藍染の炎
傍観、深度、水族館の罅
開かない自動ドアの前に立ち尽くすセーラー服の茜色、注射針の海に溺れる無垢、差し伸べられる手すら白骨化しているというのに――
硝子の揚羽蝶が砕け散った時、蜜柑畑と影絵の街が暗転する
誰もいない不明瞭の番地、(無)に浸されて終わりを祈る無神論者、緋色の十字架、
青空
――やがて一羽の鴎がライラックを啄み、世界は朝焼けを忘却する