haiirosan's diary

散文とか

猫の海で「牛の首」の話を――

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墜落したブラックボックスだけが、微かな産声をあげた。
0ばかりが刻まれる画面に、少女はリキュールを突きつける。
水色の海、深紅の空、翡翠の日曜日
イロに憑かれた月曜日に、彼或いは彼女が絶望の鈍色を選ぶことを誰が――
そう、「猫の海で(牛の首)の話をしよう」
殺戮の神はそう呟いたけれど、此処には全てが消失した形跡しか残っていなかった。
不在票が齎した怪異を、彼女らは如何に弁護するのか?
破られたF.K『判決』の最終頁、彼の心を塗り潰したのは、途方も無く空虚なボールペンの傷痕だった。
緩やかな死と指先の敗血症、音階は脆くも崩れ、テトリスは永延とブラックアウトしたままだ。
嘆きの植木鉢に供えられたウォッカの腐敗が告げる晴天に、蜃気楼は唯、自動筆記を繰り返し続け、
風切り羽が花火と共に墜落してゆく。遊覧船に佇む48の亡霊の拍手喝采に、錆びついたシャンデリアだけが救難信号を発信する。
明滅する光、色彩を剥奪したその左手に、そっとメスをいれるのは__
見えない水が穏やかに囁く「肥満な死」は、きっと自らのことでは無いと、這い回るしかない廻廊の廻間で私の眼は渇ききっていて。
酸素を失うだけの葬列で、いつまで君は造花の花束を揺らし続けるのか?