haiirosan's diary

散文とか

夏の雨はいつも残酷だから、

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雨の通続音がラジオノイズに溶ける
最期の子守唄がサイレンに変換されても尚
水灰色の旋律は止むことなく
錆びついた人魚の叫び
匿名の少女がナイフを握り締めた時
街の柔らかなネオンが幽かに揺らいだ――
……楕円の楽園、花火と隠匿
色彩罪はモノクロームのトローチに溶けて、7月は霜柱に貫かれる
冷めたアイスティーの矛盾
冷めたアイスコーヒーの青
冷めたアイススケートの赤
__滴る血すら意味を成さないのに
夏、夏はいつも残酷だ
見つからないサンダル
溶けるだけの氷
首吊りのクーラー
紅が永遠とうな垂れて
海面に蒼の救済は無い
蝉の死骸が灯台で揺れる
蛍の明滅に湿気た0.3/3mm
最期の紫煙が消えたとき
花火の嘆きは喜劇へと――
やがて、炎は冷たい笑みに掻き消された
発見された足首
ドライアイスの偽装熱
サーカスの猟奇殺人
未だうな垂れたままの太陽
水面に浮かぶ彼岸花の青
早過ぎた埋葬
血に濡れたウエディングドレス
無人の結婚式と赤いピアノ線
降りしきる雨、
降りしきる雨が
色彩を水葬へと導く