haiirosan's diary

散文とか

百二十分の屛風

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ひび割れた新宿スクリーン
地下鉄に翡翠の海が流れ込む
炎症を引き摺ったままのスカートは
無垢と海塩に切り裂かれ
見えない水死体 可視の海月
変色を訴える水彩画
紅色の水平線に救いは無く
吊革を見つめる瞳は光すら無く
傍観者であることが罪ならば
救命艇に乗せられるのはいつも
壊血病のライムと
穴の空いた浮輪だ
硝子の悦楽、水の中の花火
冷熱だけが彷徨う夜に
シャッター音が心を閉ざす
彼或いは彼女
散りゆく未来すら
散りゆく為の今すら
死んだ眼で踊り 忘れて
藍色に突き刺さる訴訟
黒服の舞台と偽証罪
断線したマイクロフォン
議事録に刻まれた言葉は何も――
白紙、沈黙の鶯色に誰もが足 首を攣る
黒い影に装飾された眼球
暗い影に装飾された意味?
百二十分の屛風には井戸からもがいてはもがいては這い上がるワタシの姿が映し出されて――
白衣の死体、外科室の祈り
呼び鈴は故障を偽装
渇いた血を引き摺りながら彷徨う私は
4の部屋を何度も何度もノックを、