haiirosan's diary

散文とか

円環構造の俳句と疑問符

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硝子細工の夕暮れは蒼の操り人形だ
教会のステンドグラスが朗らかに嘯くけれど
彼女の色彩は未だに死んだままだから――
空白のチケット
虚ろな番号を君は言い当てることが?
4730821569
ハーシュノイズ
モノクロ・ブラウン管越しに視た観覧席には、たしかに1人だけ、血に染まる死者が黒い染みを纏わりつかせながら佇んでいた。
誰も気づかないまま
誰もが笑いこけたまま
誰かが遺体のまま
コマーシャルの挟間
カメラの虚構と現実が交わる刹那
死者は臓器と真実を零し
生者は赤と黒を受容する
秋色が忍び寄る頃
密かに埋めた死体と貝殻は海色に浄化された。
記憶とカッターナイフ
裸足から流れる血
鴎が叫ぶ死の号砲
有刺鉄線のような木々の牢獄に囚われて
渇ききったまま永遠に彷徨うのは――
金木犀散りゆく暁、傘が一つ、
また一つと倒れゆく
「終わりも始まりもない?」
火を放てば燃えあがる序章
二つの終幕が降りない時
三つ子の母のドレスは紅いまま
カウントダウンが死を刻めば
秋の牢獄は終身刑を許さない
境界線上、散る鴉、白昼夢は現
円環構造の俳句に疑問符をそっと添えれば
彼らは教壇から姿を消す
踊らない言葉或いは、
砂塵に傷ついた筆が描くのは
いつも切り落とした左耳だった。