haiirosan's diary

散文とか

カテーテルの姦悪と錆びたベッド

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雨音が硝子を炭化させる。
変拍子の化学式が揺らぐ時、
イロは血を纏い水は意識を喪った。
鴎はいつも死体だけを赦して、
いつかの冬の花火も、
黄昏の電線から飛び立つ鴉も、
夕陽のような記憶と共に薄れてゆく。
薄氷、水中花咲き乱れ、水槽は不審死が彷徨う。
斑金魚のワルツ、
極彩色の屛風の彼方。
花魁の血痕(だけ)を鑑賞する少女の瞳には千枚通しが突き刺さり、豚の血と夏が熟れはじめる。
宴の果て、紅い夕日が永延と照りつけて。
塩素の焦げる蒼だけが微笑を零した。
「切り開かれた血管の海に、誰ひとり溺れる者はいなかった」
そんな証言をした或る祝日は、
断頭台の上で自らの数字を忘却してしまう。
カテーテルの姦悪と錆びたベッド
存在を掻き消された黒板に刻まれた彷徨う
爪 痕
「きみがみつかるのはいつだろう?」
地下室の向こう
血溜まりに囁くのは
__
――
そう、屍のレンズが砕け散って、
やがて散りゆく桜がすべてを終焉へと導く。
裸体の被写体とアイデンティティを亡くしたカメラの悲鳴。
アスファルトはいつも嘆きの鴎が徘徊しているから、誤報の雨音が彼らをドアの彼方に閉じ込めてしまう。
黄昏れ時
時計の針が左眼を抉った刹那、
右側の平行世界は炎だけが時を刻んでいた。
錆びついた破傷風の連鎖に、誰もがシャッターを閉ざしたまま笑っている。
理由の無い昏睡を夢みた人々は、誰かの焼身による訴訟を嘆くこともなく、
二酸化炭素に浸されたベッドに、(きみ)はずっと横たわったままだったんだ。