私だけが取り残された砂漠の果て。
炭化した夕日のシャーベット渇いて、蛇が高速道路を這い回ることをオアシス・アイスの色素が描く。
意味を成さない言葉の配列に、地獄の化学式はそれでも毒を織るために、
――鷺は風切り羽すら亡くしたまま
歩みをやめた葬列から飛び立っていった。
「涅槃 プールの底 赤い靴
羽根を無くした蝉の群れを視ている
終末の夏休み 移ろう海辺
水羊羹の変色
8月32日 終わりのはじまり」
夏と硝子の災禍、太陽への賛歌を放棄したのは?
朽ち果てた信仰、マリアと病室の遺体
遺棄死体にしか生息しない果物みたいな虫の正体、砂のジェンガを繰り返して
手繰り寄せたゲームセットすら、夢見る機械みたい
そう、金網からはぐれた有機体が、視えざるアルファベットを嘆く。
遠く、遠くで放たれた心臓に鼓動は無く
暗い眼をした豚の皿がナイフに錆を滲ませて
心不全のワイングラスにアスピリンを捧げた。
酩酊、心拍数の零下、
眠りには果てがないから
桜には涯てがないから
私はずっと遺骨で拵えた飴を舐めていた。
祭屋台にツルハシ刺さり
簪むくろと金魚鉢、水が腐る
花びらの下は殺しと縊死を浄化する
そう云った猫は波止場の夕刻にそっと消え、
潮騒が沈黙を永延と奏ではじめた。