haiirosan's diary

散文とか

黄昏色の陰翳

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黄昏色の陰翳から、色彩と人々が消え去った。
平行する夕暮れ時に、逆さまに映る少女たちの鬱血__
或いは、
(昇ることの無いエスカレーター)を求めて彷徨う少年たちの影絵を塗り潰してしまうのは――
ゆるやかな波紋が水鏡の緑歌を瓦解させる。
灰燼と化した(回帰すべき場所)を
彼らは怨嗟と欲に浸された祝日法の糸に、
鋼鉄の糸に無慈悲に揺られて。
__最期に揃えた水際の靴すら、
救いようの無い空白に浸されていた。
紫煙へばりつく天井)
幽かな誰かの指先覗いて……
夕刻の夢魔は一人、また一人と亡骸を増してゆく。
五月雨のような髪に隠された正体に、逢魔ヶ時は永遠を湛えて、いつまでも夏が終わらないかのような__
止まないⅱの雨に刻印されし熱傷は、未だに俯いたままで、宙空の蝙蝠傘を見失ってしまう。
着地点の無いパラシュートみたいに、酸素と死の濃度が増してゆく。
やがて、茜色の暁のような傷痕に、無言の起訴はレインブーツに蹴散らかされて――
陰画の夕暮
琥珀の夕刻、遠い街の鴉が自らを変死体と化し、
黄昏を茜色に染めた。
誰も知らない(鬼ごっこ)を終わらせることのできない少女たちを救える鳥たちは、歪な旋律を奏で始めて__ 
口紅がまた一つ、粉々に。