haiirosan's diary

散文とか

実体の無い天使と奇数

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鏡を遊歩する炎
三面鏡の迷宮
夕刻の轢死体引き摺られ
反転した海は赤みを帯びてゆく
__
(天井)
落下するクランベリー
安楽椅子が催す葡萄酒の醸造
埃まみれのグラスは砕け散ったままだ
螺旋階段から墜ちる快楽、
注射器の海に浸る白昼夢、
正方形と逸脱の楕円形に書き込まれし数式に
「最期」のチョークを粉粉に砕いてしまう。
――描かれた希望を薬液で塗り潰すのは
いつも実体の無い天使なのに
血の滴る酩酊
血の渇く昏迷
血が唸る雷鳴
赤珊瑚ノ花花散って__
あまりにも静かな緋色の呼吸器
奇数の配列に幽かな冷熱が忍び寄る
眠りのアスファルトは革靴の鼓動に蹂躙されて
左手の9,
彼らは無意識の審判を微睡みのまま受け入れる。
__
「切り裂いた自らのスカート」
「茜空に罪の視線」
「世界との断裂」
蠢く左手とダガーナイフ
実体の無い天使の悲鳴に花束を
実体の無い天使に火葬を
――やがて、いつかの少女は12.5を振り翳し
鈍色の奈落へと柔らかに墜落していった。