積み木の街は、逆行世界の夕刻に呑み込まれてしまった。
網膜に刻まれた鳥たちの行方
逆再生されるサイレンの悲鳴
――揺らぐ影も躍動するナイフも正体を喪い、
体温無き戦場に置き去りにした指輪の記憶すら、名も無き人々は忘れてしまう。
琥珀の蝶々が飛び去って、冷めきった秋茜は自らの失血死を偽装する。
少女たちの死に贖罪は無く、枯葉の塹壕には火炎瓶が間断なく投げ込まれた。
焼け落ちたのはきっと、あの日の朝明けだから
此処では軌道を喪った星星だけが呼吸をしている__
「剝ぎ取られたガーゼの秘密」
造花と花火、喪失を水に浸したのは、あまりにも無慈悲な時雨だった。
毛細血管散りばめた昼の夜、
血の滲むベッドの焦げ痕
燃えあがる空を糾弾するのはきっと
――
火を放つ奇数、むらさき飽和する、
――或いは融和と変死。
白昼はいつも夢を夢とユメノ
淫らさに砕け散った宝玉の色彩に気が触れて、
イロが浸す透明な水、硝子の罅__
かつては白磁を湛えていた少女たちは、可憐なままの左手を奪い合う。
クリームソーダに冒された境界線には、未だに罪と罰の赤が隠されている__
そう嘯く老賢者を横目に、この世界は再び、炎と血による浄化を選択してしまった。
春の中立地点、太陽だけは純真なまま
全てに不公平無き熱病と昏迷を与え……
――蜃気楼を忘れたはずの円卓上が、ほんの少し揺らいで、壊れた僕の網膜ト
『こころ
』
に
、
見
えた。