haiirosan's diary

散文とか

「記録に遺されない未解決事件」

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風船のワルツに水槽と呪詛を提示したことになれば

人々は私を殺人者だと指さす間もなく、

瞬く間に罅割れた硝子に

正常を咀嚼する解釈すら皿の上の「豚の血」をワインに一匙
最期の記事に載せられた死亡は、
紛れもなく春雷の残り香だった

かつての栄光と希望は穏やかに隠蔽され、

フェンスを掴む少女の右手は握力を忘却し、唯、無慈悲な太陽の傷痕が

空の境界を亡骸へと変換する。
__見えぬ神は街の色彩を消し去り、蒼白な左手が墜ちてゆく。

「鈴蘭の造花に憎悪を刺し向けろ」
変容した羽虫は、喪った羽根を自傷しながら、そう呟いた。
大地を這い回る毒蛇と綿飴の不可思議

4階の窓辺に映る縊死体とカクテルに奇数は存在しないから――

春画のネオンを隠匿する、いつかの桜はノイズに揺らいで

街の怨嗟と埋められた、幾千の死体の幻に揺り動かされている。
――記憶 渇ききって

私の唇から幽かに零れた敗血すら

「無」を緩やかに震わせただけだった。

西日に拐かされし黄昏雲、

痕跡もなく「記録に遺されない未解決事件」として、4月は黙秘を続けた。
ただ、砕け散る(死)を選び取ったフィルムには、忘れえぬ記憶として確かに_