淡きリキュールに細波が抱擁を求めて
藍色の頬は幽かな熱を抱く
あの空と海(のような)陰画はやがて切り裂かれ
其処に「七限目」はもう存在しなかった
薄荷ざわめくいつかの空白
奇数と偶数の狭間、成層圏とオーケストラ
柔らかな枯葉がワルツを奏でる
――彼方、波打ち際のような雪雲の五線譜が揺らぎ
季節はまたひとつ足音を消してしまった
宙空のサーカス業火に溶けて、ブランコから崩れ落ちるサルトルのおうと、唐突なる悲劇に台本を紛失すれば、誤った焚書にあなたは鉄の牛に寝転んで――
熱帯夜の永眠、
極楽鳥が彩る炭化した天蓋に視る夢は
あまりにも黄昏色が深くて――
密林の地下鉄 横たわる海柘榴
紅に濡れた花片は艶めかしく
階上の紙煙草を静脈血で浸せば
此処には忌避すべき喧騒も
モノクロームの靴音も柔らかに消え去ってしまうから……
「そして桜が血を滴らせる。花瓶のアリス、アリスの造花に過敏性な早咲きの少女、口紅の食紅があないとしあがないとし、死体の肉で最もワルツが踊れるのは膵臓であり水槽で水の中のナイフと少年がスマートフォンを翳すのは3104丁目のアルビノ金魚前だってこと。そう、新宿アルタ前なんかじゃなくて」