haiirosan's diary

散文とか

茫葉に隠されし百日紅の気管支

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紅葉のフィルムに逆行する溺死が浮游する。

血に濡れても尚、伸ばす手とサイレンの唸り

白衣が爪弾く猟銃のざらつき

救護されるべき血小板に明日がみえない

細波のような遠き雨音が、心拍を拐かして__

「此処は藍色と宵色を見失った街」

暗渠明滅、蒼白ノ空白ト記憶

……不可視の鬼が隠れ潜み、可視の呪詛が充血するままに伸びた髪。

貴女の最期の左手が、汚れなき水を求めていたことすら、きっと忘れてしまうのに――

彼岸花の素毒に触れ、あの揚羽たちが私を嘲笑する

光渦巻くままに嘯く羽根は鬱金イロに脱皮して

あまりにも陰惨なる秋空を眩き、水彩画へと塗りかえる。

――いつか飛び立つ夢すら、気管支の絶望と猜疑心が

また一つ、何処かの胡蝶の夢を奪い去って――

車輪の下と平行世界

暗転した水鏡に映る轢死体の真相

止まない渇き、

百日紅の真相、

パレットに滲みる終わりの狼煙、

翠緑に抱かれた宵枕は韻律と旋律を打擲して

車輪の下のヘッセは少年時代をアスピリンの影に隠す

―― いつも放棄されるのは、言葉なき雨後のマニキュアなの?

剥がれそうな爪色と すれ違う夕景と影の街に

逆さまの蝶は杳として行方不明のまま

この空を泳ぐ羽根は鬱金色に溶けてしまったから、

誰もが俯いたまま

錆びた簪に滲みゆく己の血に気づくこともなく……。