haiirosan's diary

散文とか

上海瑠璃と麝香唸る雨

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アレゴリーの花花融解して、かつて水色を湛えていたはずの空も、天鵞絨の終幕を垂れたままだ。
――やがて、全ての輪郭を曖昧にするイロに濡れて、(あなた)の思考と左手に茜が滲む。
上海瑠璃と麝香唸る街――レプリカのカクテルが酔酔を齎す時、私の網膜はステンドグラスの散りゆく幻と金箔雨散る幻覚に乱されて……
最期に映るのはきっと、反転と色素によって暴かれた、この世界の深層だから。
鬼の遺灰縺れあう此処は血の菜畑
忌みの深淵に漂う曇と村雨淡く
彼方、うぐいす色の現世は生ける屍揺らいで――深紅煌めく境界線に
あなたの瞳は血線を滾らせて
蒼き陽炎揺れる八月のスクリーン。
水を亡くした世界に齎す、潤いなき幻覚に溺れれば、足下の蠍の跫音すら気がつかないのに。
残像染みつく刹那、溶けゆく記憶への救済措置として、色の無い錠剤を咀嚼して――