haiirosan's diary

散文とか

千里眼散る剃刀花の都市

震える指先の爪は淡く。彼方の蒼すら揺らぎに揺らいで剥いだ雲の質感はあまりに糖度と背徳に充ちた、あの誕生日と井戸の底に眠る砂嵐の画面と映り得ない異質も、あまりにも平坦な時間と街の冷たい構成音よりは救いがあるはずさ。
アンカラー滲む都市は静寂に浸されて、影絵のように揺らぐ悲劇と茜色は柔らかな隠匿を齎す。
化学式の配列は寸分の狂いもなく、貴女の呼吸を、煌めく炎を奪い去ってゆくから――
千里眼散る剃刀花の傍ら、折れた骨、桃肌の痕跡、アンダルシアの夢ゆらめいて――壊れたモノクロームの祈りはやがてマーブルカラーに冒されて、沈黙に溺れてしまう。
青一号溶けゆく鋼鉄の暁、眩暈と酩酊に鈍重さを増した機械の兵隊は、不可視のナイフを世界の頸動脈にさし向ける。
流れる血すら存在しないスクリーンの深層、彼方の街の砲声が夢幻のように遠のいてゆく。