haiirosan's diary

散文とか

紫陽花とアリアドネ

昼の足音は色めいて、フィルムカラーの水彩が静かに熔けてゆく。

水槽の交錯点、錯乱した蒼は終末のヴェールを纏い、その深さを増幅してゆく。
地上は色彩の無い迷宮、聳え立つ街灯は煌めく夢を視ることができるのか?

海原のようなビルの群れは、機械音の潮騒を永延と繰り返す。
飲み込まれた水死体を柔らかに火葬する夕日が、穏やかな橙/紫色に世界を染めていた。

紫陽花の迷宮、イロを喪っては華やぎ、極彩色を彷徨う。
いつか、円環構造の迷路を類義語だと定義した紫暮は、アリアドネの糸すら渇ききってしまう沙漠に曝されている。

サイダーブルーの廻間、雨の予感は心肺を零しながら流れゆく。透き通った蒼に泡沫はなく、唯、正体の無い鳥たちの賛美歌が揺蕩っていた。