haiirosan's diary

散文とか

明滅するままの秋の葬列

茜刺すモルフォチョウ去りし蒼

残り香のイロを掻き消すように、金木犀が縊死する秋暁。

確かな記憶すら亡くした「君」の葬列を傍観者として、レコード散りゆく雨の足音に耳を傾ける。

唯、金箔が剥がれるメロディが続く

あまりにも凍てついた9月の迷宮

私は其処で閉ざされたままなのに。

言葉の代償は紙幣に届くはずもなく、彼或いは彼女たちは意味を持つことを忌み嫌う。

無味乾燥なフォアグラの末路?

燕尾服が漂白されて、全ては白日の下に。

天井から吊るされた傘に空いた空白

繰り返されるスピーカーから世界の終わり

♭なままのあなたの終末は、きっとアスファルトから逃れた、最後の水痕を希求するから。

そう、瑠璃色の海渇ききって、網膜と記憶を游泳していた夏はテトラポットを求める。

沙漠のような砂の城

宴の痕は白骨死体、

かつて色を湛えていた、全ての国旗は

黒く塗り潰されて――

 

夏爆ぜて旋律鳴らす花喇叭

水熱が花花を彩ることすら忘れて、砂漠のような現世はより深い渇きに呑み込まれてゆく。
あの口紅色、揺れるクリーム色は為す術もなく崩れ去って。

夏爆ぜて旋律鳴らす花喇叭

熟れた躑躅燃ゆる辻風に、啄木鳥唸る暁の砂の音階と幽かに滴る蜜の手招き

――ほら、影のない鬼が忍び足でやってきた。

啄木鳥と狐憑の誤読、首をなくしても羽根が、

盲目に飛び交う姿は、暁の地下鉄に切り裂かれた頸動脈の数を記録する、可憐な花屋のようで……。

色素濡れた街の化学式、

かつて身を投げた青も振り翳された白銀も、その色を抹消した喧噪と狂騒。
此処では、アスファルト排気ガスが清廉さを彩っていることを、不意に君は忘れたように。

忘却と虚無を抱擁する、透過性の夜伽

浮游する星々は、青1号に染まった水ゼリーの底に沈む水死体を隠し、無数の秋色をどこまでも艶やかに輝かせていた。

安楽椅子のパラダイス

綿飴流るる白昼は甘味を帯びて、
獄熱と暗蒼に浸された、いつかの7月に幽かな救済を齎していた。

平行世界の翡翠色は、錆びた車輪と不明瞭に蠢く「なにか」を永延と映しだしていた。

――夏であったはずのスクリーンを瓦解する、暗い五月雨の宵。其処にあるのは、

「ほんとうの物語」に成り得たはずの……

呼吸なき水中牢獄での時はあまりに永く、炎或いは心臓蠢くミナソコは罪と罰に濡れた世界に、死んだような眼差しを向ける。

ゴシップでスキップ

安楽椅子のパラダイス

落第点と徒花

そう、飛び降りの夢は快楽にも似て、惑星の煮凍りはいつでもあなたの澱んだ眼みたいだと笑えば、チョークで描かれた墓標は硝子みたいに透き通って。

私の淫らな死すら、どこか絵空事のように感じたんだ。

千里眼散る剃刀花の都市

震える指先の爪は淡く。彼方の蒼すら揺らぎに揺らいで剥いだ雲の質感はあまりに糖度と背徳に充ちた、あの誕生日と井戸の底に眠る砂嵐の画面と映り得ない異質も、あまりにも平坦な時間と街の冷たい構成音よりは救いがあるはずさ。
アンカラー滲む都市は静寂に浸されて、影絵のように揺らぐ悲劇と茜色は柔らかな隠匿を齎す。
化学式の配列は寸分の狂いもなく、貴女の呼吸を、煌めく炎を奪い去ってゆくから――
千里眼散る剃刀花の傍ら、折れた骨、桃肌の痕跡、アンダルシアの夢ゆらめいて――壊れたモノクロームの祈りはやがてマーブルカラーに冒されて、沈黙に溺れてしまう。
青一号溶けゆく鋼鉄の暁、眩暈と酩酊に鈍重さを増した機械の兵隊は、不可視のナイフを世界の頸動脈にさし向ける。
流れる血すら存在しないスクリーンの深層、彼方の街の砲声が夢幻のように遠のいてゆく。

奇数の首と春うらら


鬱金色惑いし臓器へべけれて
死んだ眼のまま何処へゆくやら
――混濁した春うらら、葉桜に揺らぐ蝶々を誤認した色彩、幽かに香る現の憂鬱――退屈だらけの夢に圧し切られた奇数の首。
……疵口から零れた敗血が、再び死の誘惑と刹那の春を描きだす。
無垢の斬首、椿頸墜ちて、葉桜は再び春を取り戻す。救済なき黒を湛えた血に染まる、暗い暗い茜色を纏って。
轢断されたスクリーン、階層の螺旋階段瓦解して、水中は水なき酸素に浸る。尾を引く黄昏時……死んだ眼のまま漂う春は焦熱すら渇ききってゆく――
正体不明の紅梅イロ、自らの名を求めて曇天の世界を彷徨う。
その花肌を少しずつ血と季節で染められながら。

紫のアレゴリー、併走する平行世界

鬼灯火を放つ白蓮の夏日、丑の皿
円卓上に炭化した君の夢幻とネオンライト、
ワルツを踊るのは草臥れたマルボロと渇ききったスコッチだけだから、色夜はまた訪れる。
葬礼の熱病散りぬる夕に
むらさきの刃先揺らいで或る。
何者かなにものでもなく切り裂いて視えたのは、終焉なき黄昏色の炎……
描かれてしまった水鏡の水彩画、
幽かに揺らぐ色彩と呼吸は、意図無く忍び寄る暗雲と冷色の霧雨によって、いつの間にか殺されてしまった。
紫のアレゴリー
併走する平行世界
光無きハイウェイの真相――
少女が「青」を求めて彷徨う。砂漠のような車道には、もう清廉も生者もなく。
唯、夢みる機械と鋼鉄の夕刻が輪廻を刻んでいる。

コンクリート・アイスクリーム・ベンチ

「昨日公園」という名のベンチに映る鏡をかがみのかみと紙を髪を結わえるままに、波乱なき千草はにがよもぎの悲劇を映すかのように枯れていった。

 あまりにも神が余剰な生産ラインが流される、ちゃぶ台がひっくり返ったままの居間に陣取るTVスクリーン。アイスクリームと風船の吸い過ぎで昏倒したママの、その背景に描かれたのは、致死量であるはずの娘と息子の敗血であることに、どうして電線に停泊する鴉たちは気がつかなかったのか?

 そう、葬を繰り返すオーケストラが仕掛けた銃声のファンファーレ。公園が最早バルカン半島の火薬庫のような狂態を示すことを、円卓上の中華料理は油と凝固したグルエースの痕跡を提示し始めていた。

 確かに桜はいつか散ってゆくし、八重桜のスカートもやがては色褪せてゆく。貴女が轢断した公園の空席もきっと、代替えのマネキンが剥きだしの白骨を俯瞰させるかの如く、「この世界のヴァニラの白は偽物だ!」と泣き喚きながら、アイスクリームパーラーを襲撃するあの町の住人の純粋な行動を模範すべきだと思う。

「コーンカップの狭間に存在する宇宙を、そろそろ手に入れなければね」

――深夜二時のベンチをギロチン替わりに用いた、赤マントがそう嘯く。

火の車と化した「   」パーラーの焼け跡を想像する度に、30円のチョコレートは壊れかけた笑いを浮かべるのが、なぜかフレーバー選択を十秒以内で求められる31歳のアイスクリーム・ショップ=人生を選択する時間――少なくとも長考できるような時間は私達には存在していないと訴えかけているような気すらした。

 暗喩に用いる薬物、渇いた笑いとコンクリート・ジャングル、そう、錆びゆくベンチの色すら、9回二死を諦めないたった一人の生存者すら、アスファルトではなくコンクリートのような無慈悲さに打擲されてしまうこの現実に、誰が砂漠のような氷菓の幻覚を夢見ることができるのだろうか?