haiirosan's diary

散文とか

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

地下鉄、血漿散る水無月

地下鉄、階下に横たわる海柘榴。 声にならぬ声が刻まれた39面 奇数を刻む段数に、偶数はそっと唇を噛みしめる。 剥がされた革靴、暴かれたハイヒールの行方紅に濡れた花片は艶めかしく、階上の紙煙草を静脈血で浸せば 此処には忌避すべき喧騒も、モノクロー…

成層圏、紅色のオーケストラ

淡きリキュールに細波が抱擁を求めて 藍色の頬は幽かな熱を抱くあの空と海(のような)陰画はやがて切り裂かれ 其処に「七限目」はもう存在しなかった 薄荷ざわめくいつかの空白 奇数と偶数の狭間、成層圏とオーケストラ 柔らかな枯葉がワルツを奏でる――彼方…

薄羽蜉蝣の記憶

血小板の夕暮、君の血は致死量を超えてまで夜を忌避する。 心のシャッターに幽かに刻まれる爪痕 死への欲動は、浴槽に投げ込まれた造花が魅せる快楽と夢。 呼吸を審判する水の中には 錆びることないナイフが揺らいでいるから __ 彼方の警告音 泡沫に眠る雲…

むらさきのそらと痛絶

刹那の紫鏡ひび割れて、あの日の少女は「死の部屋」を描くことを選び取ってしまう。鮮やかに痛く、-を刻む筆先、 不鮮明な色彩に誰も拍手を送ることなく、 栄光と光に充ちた記憶すら、やがて翳んでゆく―― 暗い太陽 暗い笑み 彼岸の白昼夢は止まぬ秋雨と 死に…