haiirosan's diary

散文とか

スルツェイのストーリーテラー

――ザザ降り、気圧はすべての視えぬ希望を殺す。敗血の痕に、かつての栄光と勝利は藻屑と消えてしまった。こうして遭難と死を繰り返す日々は、遺された沙漠の水のような愛と藍を愛亡きふりをする愛という憎悪のホテルの片隅で愛撫するみたいだ。

 さあ、雨音のままに閉ざされたベッドにカッターナイフを突き刺せば、今にも欠落しそうな爪と決壊した瞳から零れ落ちる「理由なき理由」は今日もまた右側の偏頭痛を催した、ような気がした。

「その血に濡れた左手で黒い太陽を掴め、みえない太陽をプールサイドの少女たちの死体と共に」3階から解き放たれた(灰色の猟犬)について嬉々として話すSNSの亡者共は、左手のアルコールと閉ざされた瞳孔の目線から震えのアドバンテージもなく。しかし、どうして居住地の存在しない私の部屋のような廃墟に貴女がいるのか、私のようなわたしにはりかいができなかった。

 ドレスコードに身を隠せ、ワンミスコールは命取り、革命のないステップが徐々にモノクロームに染まるから! そう叫び散らかす三時間の狂気は、奇数を忌む私の肺病と目視できないシーンに、どうしても「名も無き薬」を求めたくなる衝動に駆られてしまう。またこうして繰り返す7年前の記憶は、私があの時………おけば、ぼんやりと崩れゆく自らの感性と外見に沈むことなく、メデューサの筏の悪夢をみることもなかっただろう?とスルツェイのチケットがほくそ笑む。

 いつまでも藻掻いてばかりの空はあまりにも鴉にみちていて、消えゆく花火の思い出すら、僕もあなたも忘れてしまうから。夏が唯、『海辺のカフカ』を砂の城に埋めるべきだと希求するのは、紛れもなくルッコラの葉が渇ききった後のストーリーテラーである。

 そう、語り部はいつもマカロニとリブロースを切り裂いた後の貴方と貴女のナイフに遺されているのだと、複雑骨折したマイクスタンドの夢想家は語るが、それでも首を吊ったピエロは、あまりにも爽やかな笑みを浮かべていたんだ。