2022-01-01から1年間の記事一覧
冥海の月は細波に揺らぎ、夕刻に溺れる街に笑みを零す。 死を拐かす白磁 深みと残響を帯びた蒼は、少しずつ歪を増して、この世界を―― 白日の鎌、田園に溺れる都市のテクスチャ 白磁の左手は未だ血管浮遊せず、 色の無い春を包むリバーブ 桜花の下に手首隠せ…
海なき夕刻に珊瑚揺れる。 墓場のカーニバルは発想の種子を芽吹かせて、1970年のカセットテープに逆回転をもたらす。 やがて、無機質に斬り落とされる無垢の首も、 夜は傍観するから。 論理無き迷宮を彷徨う蒼い蓄音機牛の首と薔薇色のパラソル舞い踊る 空は…
茜刺すモルフォチョウ去りし蒼 残り香のイロを掻き消すように、金木犀が縊死する秋暁。 確かな記憶すら亡くした「君」の葬列を傍観者として、レコード散りゆく雨の足音に耳を傾ける。 唯、金箔が剥がれるメロディが続く あまりにも凍てついた9月の迷宮 私は…
水熱が花花を彩ることすら忘れて、砂漠のような現世はより深い渇きに呑み込まれてゆく。あの口紅色、揺れるクリーム色は為す術もなく崩れ去って。 夏爆ぜて旋律鳴らす花喇叭 熟れた躑躅燃ゆる辻風に、啄木鳥唸る暁の砂の音階と幽かに滴る蜜の手招き ――ほら、…
綿飴流るる白昼は甘味を帯びて、獄熱と暗蒼に浸された、いつかの7月に幽かな救済を齎していた。 平行世界の翡翠色は、錆びた車輪と不明瞭に蠢く「なにか」を永延と映しだしていた。 ――夏であったはずのスクリーンを瓦解する、暗い五月雨の宵。其処にあるのは、…
震える指先の爪は淡く。彼方の蒼すら揺らぎに揺らいで剥いだ雲の質感はあまりに糖度と背徳に充ちた、あの誕生日と井戸の底に眠る砂嵐の画面と映り得ない異質も、あまりにも平坦な時間と街の冷たい構成音よりは救いがあるはずさ。 シアンカラー滲む都市は静寂…
「昨日公園」という名のベンチに映る鏡をかがみのかみと紙を髪を結わえるままに、波乱なき千草はにがよもぎの悲劇を映すかのように枯れていった。 あまりにも神が余剰な生産ラインが流される、ちゃぶ台がひっくり返ったままの居間に陣取るTVスクリーン。アイ…
薙刀の如き光刺す秋の血小板 彼らは自ら傷つき 自ら血を流す 踊る影絵 欠損すら忘れ 血を纏う黒焦げのワルツ 幽かに遺る水緑の清廉も やがて茜の牢獄に引きずり込まれて 葡萄棚垂れ落ちるシャーベットは 匿名の心肺を柴に染めて―― 夏の終焉、麦わら帽子を喪…
終秋のかさぶた曝されて 季節を愛撫する蝉時雨は不協和音を奏でる 茜と鬱金の明度に眼をやられ 盲目の憂鬱が色を亡くして彷徨っていた―― 燃えあがる 倫理の造花 色めいて 煙る刹那に 瞳孔開く 第三次の末路は無限の廃墟と温もりなき遺体、彼方のサンスクリッ…
隠されし藍を求め彷徨う巡礼者たちは、 蒼影の砂漠に引きずり込まれてしまった。 自らの正体をなくし 傷無き破傷風に悶える暁 鈍色の奇数 偶数で瓦解する膿のような、 沈黙のコンパスの針が心臓を貫く時 青ざめた太陽と月が融けあうから―― パステルブルーの…